新潟-北京空路 実現へ力強い取り組みを

 本県訪中団が新潟-北京空路の開設を中国政府に要望した。首都・北京とを結ぶ空路の実現は、北東アジアのゲートウエーを掲げる本県の長年の課題である。
 成長戦略が問われている日本にとって、高度成長を続ける中国への新たな路線開拓は大きな意味を持つ。新潟の経済活性化にも資する。実現に向け粘り強い取り組みを求めたい。
 新潟空港の国際線は現在6路線で、中国、韓国、ロシアなどと結ばれている。中国路線はハルビン、上海線で、北京線が実現すれば3路線目となる。
 中国路線の利用状況はここ1、2年世界的な不況や新型インフルエンザの流行などで落ち込んだものの、ハルビン線が年間3万人超、上海線はほぼ2万人で安定的に推移している。
 北京線が加われば本県の対中国への拠点性が増すのは間違いない。しかし、実現に向けた戦略には視点の転換が必要だろう。先行2路線が開設された1998年当時と現在とでは環境が大きく変化しているからだ。
 当時は地方も含め製造業を中心とする企業の海外展開、中国進出が著しく、主に日本人のビジネス需要と観光需要が後押しした。だが、十数年が経過した現在はどうか。
 経済成長を遂げる中国は「世界の工場」から「世界の市場」とまでいわれ、自動車販売台数では米国を抜き世界一の市場規模だ。
 国内総生産も今年中に日本を抜き、世界第2位になることは確実だ。富裕層や中間層が増え、地方への内需喚起で消費大国に変ぼうしている。
 こうした環境変化の中での路線開拓には、中国人の訪日観光、ビジネス分野の需要喚起が鍵を握る。新潟から進出していくとともに、受け入れることにも重点を置かねばならない。
 最も期待されるのは観光分野だ。自治体国際化協会によれば、近年、中国人の海外出国者は2000年の4倍の4千万人を突破した。
 08年に日本を訪れた中国人観光客は約100万人で、さらに増加すると見込まれている。今年7月には中国全土で個人の訪日観光ビザ発給が解禁となり誘客のチャンスでもある。
 新潟空港の利用客数は減少しているだけに、新路線が開設されれば朗報となる。航空会社も地方空港も厳しい生き残りを迫られている。
 新潟市に中国総領事館が設置される。この追い風を生かしていかねばならない。中国と本県のパイプを太くすることは県経済にとって重要だ。
 北京と結ばれることになれば、文化や教育面などでの友好交流も活発になることが期待される。官民挙げて空路実現の機運を盛り上げたい。

新潟日報2010年1月13日

貴乃花親方 角界改革は至難の業だが

 初場所が始まったというのに、土俵外が騒がしい。元横綱の貴乃花親方が二所ノ関一門を抜け、日本相撲協会の理事選挙に強行出馬することを決めた。
 相撲協会の理事は元力士の親方10人と外部理事3人で構成される。改選は2年に1度だが、親方理事は一門ごとに候補者を調整するため、無投票になることが多い。
 貴乃花親方が一門を離脱してまで立候補するのは、角界改革へのやむにやまれぬ思いがあるからだろう。勇気ある行動と受け止めたい。
 角界の一門は師匠から独立した弟子が興した部屋など縁続きにある部屋グループのことをいう。現在、二所ノ関のほか四つの一門がある。
 かつては一門別に地方巡業を行うなど強い絆(きずな)で結ばれていた。しかし、若手の親方の中には、古いしがらみを嫌う傾向も見られ、一門意識は薄れつつあるといっていい。
 それでも理事選となると一門が幅を利かす。投票権があるのは105人の親方と大関以上の日本人力士2人、立行司2人の計109人だ。
 当選には10票前後が必要となり、各一門が年功序列を重視し候補者を調整する。平成の大横綱と称され、将来の協会トップ候補と目される貴乃花親方も、まだ37歳である。序列的には駆け出しでしかないということだ。
 理事は協会の運営を担う重要なポストである。国技としての威厳も保たねばならない。それが一門の思惑で名誉職のように決められる。これではとても民主的な組織とはいえまい。
 最近の角界は八百長疑惑や本県出身の新弟子が犠牲となった力士暴行死、大麻汚染などの醜聞が絶えない。
 事件が起きるたびに、閉鎖的な理事会の在り方と、「無理へんにゲンコツと書いて兄弟子」と読ませるような古い体質が指摘された。
 外部理事の導入などの改善策が図られてはいるが、人事などは年功序列で旧態依然だ。昨年秋場所に、横綱朝青龍が土俵上でガッツポーズをしても協会は不問に付し、上層部の指導力が疑問視された。
 相撲人気にも陰りが見え、本場所の桟敷には空席が目立つ。これで危機感を抱かない方がどうかしている。貴乃花親方が「このままでは協会は駄目になる」と憂えるのも無理はない。
 賛同する若手親方も少なくない。しかし一門の締め付けは厳しく、貴乃花親方の当選は微妙といわれている。たとえ理事になっても慣例を無視した親方への風当たりは強くなろう。
 だが、今協会に求められているのは、前例にとらわれず改革に取り組む毅然(きぜん)とした姿勢のはずだ。貴乃花親方の挑戦に注目したい。

新潟日報2010年1月13日