小沢氏資金問題 国民にきちんと説明せよ

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題で、小沢氏側が東京地検特捜部の任意の事情聴取に応じる見通しとなった。
 西松建設による巨額献金事件で秘書が起訴された与党実力者にまたも持ち上がった「政治とカネ」の疑惑である。検察当局は真相解明に全力を注いでほしい。
 小沢氏が捜査に協力するのは内閣を支える党の責任者として当然だ。疑念を放置しては政権の土台が揺らぐ。
 問題は、2004年に陸山会が東京都世田谷区の土地購入などに充てた約4億円の資金にかかわるものだ。特捜部が注目しているのは、その巨額の金と小沢氏とのかかわりである。
 土地購入は小沢氏が指示し、資金も貸し付けたとされる。だが、これまでの捜査などによって、資金隠しの可能性も指摘され始めている。
 04年の政治資金収支報告書への記載が必要にもかかわらず、なされていなかった。世田谷の土地には現在、小沢氏の秘書の寮がある。政治活動に必要な金なら、規定通り報告しなければならないのは分かっていたはずだ。
 購入資金の原資もはっきりしない。小沢氏側は「定期預金を担保にした融資金4億円を充てた」と説明したが、実際は融資を受ける直前に小沢氏の資金で支払いを済ませていた。なぜ、説明と実態が食い違うのか。
 04年当時に陸山会の事務を担当していた民主党の石川知裕衆院議員は収支報告書への不記載を認めた。特捜部は政治資金規正法違反の罪で在宅起訴する方向で検討中だ。
 石川氏は不記載に関して「小沢先生は知らなかった」と話しているというが、事実を解明するにはそれだけではいかにも不十分だ。他の疑問を晴らすためにも、もう一方の当事者である小沢氏の説明が要る。
 小沢氏には検察だけでなく、記者会見などを通して早急に国民が納得できる説明をすることも求めたい。
 鳩山由紀夫首相は元秘書による偽装献金事件で説明を先送りし続けた。元秘書の起訴を受けてようやく会見を開いたが、釈明で国民の理解を得られたとはいえず、各種世論調査での支持率急落を招いたことは記憶に新しい。
 小沢氏はこれを教訓にすべきだ。最大与党の幹事長に課せられた説明責任は首相に劣らない。小沢氏は政治活動に掛かる金の収支を透明にしているとしてきたが、今回の疑惑はそうした姿勢にも疑いを招きかねない。
 気掛かりは、政治とカネの問題について民主党内に目立った改革への議論が見えないことだ。「変革」を掲げ、政権交代を成し遂げた政党として、もう一度足元を見詰めてほしい。

新潟日報2010年1月8日

日航再建案 整理手法での混迷避けよ

 日本航空の経営再建への支援を求められた企業再生支援機構は、会社更生法申請による事前調整型の再建を検討している。
 裁判所が関与する法的整理は透明性が高く国民の理解が得やすい。社債のカットなどで資産内容の改善を大胆に進められ、短期間での再建が可能になるとの判断だ。
 日航や主力銀行は私的整理を求めている。法的整理では、倒産のイメージが取引先の混乱や顧客離れを招き運航継続への不安が高まるとする。銀行保有の優先株に損失が発生する可能性もある。銀行側は減資で株主責任も問うなど独自の私的整理案を提示した。
 法的整理か私的整理かの違いは確かに大きい。機構、政府は厳密かつ慎重に検討してもらいたい。
 ここは原点に返りたい。政府が日航支援に全力を挙げるのは、国民共通の財産である空路をできるだけ活用するためである。公的資金は活用と返済の見通しをきちんとつけ、将来の国民負担増につながるのを回避すべきだ。
 機構の法的整理案は7千億円の公的資金を投入して資金繰りを万全にする。一方、燃料など一般の債権は全額保護し、マイレージは引き継ぎ、日航株の上場を維持する方向だ。
 こうした手段が有効に機能して混乱が回避され、運航継続が担保されるのであれば、法的整理の選択もやむを得ないのではないか。
 私的整理は一般に当座の損失処理は少ないが追加損失が生じやすいとされる。ずるずると再建が先送りされるようではいけない。
 法的整理に慎重とされる前原誠司国土交通相の姿勢と機構の案は、一部かみ合う点もある。
 しかし、機構案でも議論の余地は大きい。事前調整型の企業再生はゼネラル・モーターズをはじめ米国ではよく見られるが、日本ではまだ数少ない。
 会社更生法申請企業の上場維持は2003年の東京証券取引所の規定改正で道が開かれた。ただ、先例はなく日航で実現すれば初のケースとなる。
 資産査定で債務超過額は7500億円と見積もられた。金融機関に3千億円の債権放棄を求めるという。とはいえ、その解消は容易ではなかろう。
 公的資金投入の大前提とされる企業年金の減額は、12日の期限が迫るなか、退職者の賛同が得られるかどうか微妙な情勢だ。
 もつれ合う困難な課題を解きほぐし、国民の利益となる企業再生へ方向付けなければいけない。
 政府がつなぎ融資枠を拡大したのは信用不安の広がりに焦ったからだ。もう時間を無駄にできない。政府としての方針を一日も早く固め、再建計画を本格的に前に進めるべきだ。

新潟日報2010年1月8日