問題解決の糸口になるかどうかは見通せない。北朝鮮はおととい、核実験などへの経済制裁を解除すれば6カ国協議は直ちに再開可能、とする声明を発表した。休戦状態にある朝鮮戦争の平和協定会談も呼び掛けた。
強硬路線だった北朝鮮は昨年後半から、対話へとかじを切った。米国とは核をめぐる直接交渉も始めている。声明には、対外関係改善への姿勢が強くにじむ。
だが国際社会が求めるのは、無条件での6カ国協議への復帰である。米国や韓国はすぐに拒否反応を示した。北朝鮮が「要求」にこだわるようなら、せっかくの対話の芽も自ら摘むことになろう。
国連決議による制裁で、じわじわ追い込まれているのだろうか。声明は危機感の表れとも見える。2年後には故金日成(キムイルソン)主席の生誕100年。金正日(キムジョンイル)総書記も70歳となり、そのころ三男へ「世襲」するともいわれる。いかに国家体制を維持し、スムーズに権力移行するかが最大の関心事だろう。
まず制裁を解除させる。米朝交渉か、6カ国協議の枠内で平和協定を結び、最後に朝鮮半島の非核化を話し合う―。そんなシナリオを描いているように見える。
今年で開戦60年。形の上にせよ朝鮮戦争が継続するのは好ましいことではない。平和協定もいずれ必要だ。ただ主な議題が核である6カ国協議と急に絡めるのは、やはり無理がある。国際社会には時間稼ぎとも映ろう。
ここは米中などがさまざまなチャンネルを通じ、前提なしにテーブルに座るのが先だと、北朝鮮に働きかけるべきだ。
制裁を緩める時期でもない。昨年末、タイで北朝鮮製の大量の兵器が貨物機から押収され、武器密輸の一端が浮き彫りになった。今はむしろ各国が連携して監視の目を強める必要がある。
気になるのは、米国などで6カ国協議という「入り口」ばかりが論じられ、非核化の道筋が不明確なことだ。仮にこれから北朝鮮が歩み寄って協議が再開されたとしても、そう簡単に「核カード」を手放すとも思えない。
今年はオバマ米大統領の提唱で4月に核安全保障サミットが初めて開かれる。5月には核拡散防止条約(NPT)再検討会議もある。核軍縮の節目の年に、北朝鮮をどう巻き込んでいくか。
まず必要なのは朝鮮半島の信頼醸成だろう。北朝鮮が核を持つ理由とするのが米軍の脅威だ。もしオバマ大統領が核兵器の先制不使用宣言に踏み込めば、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れて兵器用プルトニウムの廃棄に結びつくかもしれない。
日本の役割も重い。鳩山由紀夫首相は、昨年の国連総会で核廃絶の先頭に立つと表明したが、北朝鮮政策となると中身が見えない。拉致問題解決はもちろんだが、被爆国としてのイニシアチブを取りたい。IAEA事務局長は日本人の天野之弥氏で、北朝鮮の査察では先頭に立つことになる。日本政府も支援を尽くすべきだ。
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