少子化が進む中、ことしの元日を20歳で迎えたのは127万人。初めて130万人を割った。学齢方式での新成人はすべて平成生まれの若者たちであり、広島市や福山市など各地で、大人への門出を祝うイベントが開かれた。
どんな時代を過ごした若者たちだろう。物心ついたころにはバブルがはじけて平成不況となり、リストラなどが相次いだ。世界に目を移すと、ベルリンの壁が崩壊して東西冷戦の時代が終わり、価値観は大きく揺れ動いた。
さらに2003年度から、学校週5日制という「ゆとり教育」を受けた世代という見方もできる。大学全入の時代でもある。
社会の情報化が進み、通信手段もポケベルから携帯へ移った。身の回りに、ネットがいつでも可能なパソコンがあるのが普通の暮らしでもあっただろう。
「草食男子」が流行語になったように、競争意識が希薄で、消費意欲も乏しいといった見方をされがちなのが、この世代の若者である。テレビドラマ「坂の上の雲」でおなじみの秋山兄弟や正岡子規ら、情熱あふれる明治の青年たちとは対照的なようにさえ見える。本当にそうなのだろうか。
スポーツ界の新成人を見ると、世界記録に挑む水泳の入江陵介選手、豪快な本塁打で甲子園をわかせプロ入りした中田翔選手、北京五輪で銅、そして昨年世界選手権を制した柔道の中村美里選手らがいる。物おじしない精神力を持った面々である。
地方自治体でも益田市の福原慎太郎市長ら、30代の首長が増えてきた。どんな世界でもしっかりパワーを発揮できそうだ。
リーマン・ショックなど世界的な金融危機から景気後退を招き、就職氷河期の再来ともいえる閉塞(へいそく)状況に陥っている今。問題の大半は、積極性を失いがちな社会の側にあるような気がしてならない。こんな時こそ、優秀な人材獲得のチャンスと位置付ける企業が、もっと増えてもいいはずだ。
昨年来、黒人初のオバマ大統領の手で、米国への一極集中から多極化へ、世界の政治の在り方も大きく変わろうとしている。日本でも昨夏の衆院選で、長年続いた自民党を軸とする政権から、民主党を中心とする連立内閣へ、政権交代が起きた。
社会の仕組みや価値観が大きく変わりつつある時代に、大人の仲間入りする意味は大きい。7月には参院選が予定され、早速選挙権を行使することにもなる。
ネット選挙運動を解禁しようと、民主党が改正案を提出する新たな動きも出てきた。党のホームページに候補者の演説の動画が載ったり、ブログを使って活動報告したり、候補者紹介サイトができたり…。選挙カーによる連呼が過去のものとなるかもしれない。
こうした転換の勢いを加速するためにも、因習にとらわれない新感覚の若者が仲間として加わるのは心強い。どう連携していくか、大人たちが環境を整えることも忘れてはなるまい。
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