今だから話せる「拳銃暴発」の失敗談
小峰さんを拳銃弾が襲ったのは私の責任
ベレッタ22口径・自動小型拳銃
小峰孝生さんといって名前を聞いて、すぐに「ハイ、知っています」と答える人は、かなりの銃マニアである。月刊コンバット・マガジン誌に、『拳銃王』という記事を連載している人といえば、「ああ、あのさすらいのフリーランスガンファイターか」と気がつく人もいるだろう。あの小峰隆生さんだ。 そんな小峰さんたちと、年末年始の休暇を利用して、ロサンゼルスに旅行に行くことになった。ロサンゼルスには小峰さんが銃の師匠と仰ぐ人がいた。私もその方に、ロサンゼルス郊外の射場で、何度か、LAPD(ロサンゼルス警察)式の拳銃射撃(コンバット・シューテング)を教えてもらった。その師匠さんはLAPDの射撃コーチ(教官)の経験のある人だった。 それから数日後、我々はコロラド川にキャンプに行くことになった。ロサンゼルスから車で数時間走り、次にモーターボートを借り数時間かけて上流を目指す。そして静かな岸にモーターボートを泊めた。その岸の背後には断崖絶壁の岩壁がそそり立っていた。その川岸にテントを張りキャンプすることになった。 私はその拳銃を手にとって、上部を後ろにスライドさせた。その薬室にはまだ弾が入っていなかったので、スライドを前に戻して薬室に弾を入れておいた。そうしなけけば、もしガラガラ蛇が飛び出してきた時に、とっさの射撃が出来ないと考えたからだ。 テントを張り終えると、シャワー代わりにコロラド川で泳ぐことになった。そのとき、小峰さんが海パンに着替える時に、裸でフラダンスを踊って(後ろ向き)、いっしょにいた師匠の娘さん(高校生)をからかった。すると師匠は、苦笑いしながらそばにあったベレッタ拳銃を持って、冗談で小峰さんに狙いをつけた。その次の瞬間、「バン」といって弾が飛び出したのだ。周囲にいた皆は、すべて冗談で行われていると思い、大笑いして笑い転げていた。しかし師匠の顔は不思議そうな表情で、じっと手元のベレッタ拳銃を見つづけている。「なぜ、弾が出たんだろう」。その真実を知っているのは私だけである。 幸い、弾は命中しなくてよかった。でも小峰さんのすぐそばを、弾は間違いなく飛んだのだ。師匠は銃に慣れているので、たとえ冗談でもトリガーを引き、射殺する以外は人間に照準を合わせなかった。から、小峰さんは今も生きている。 このことを小峰さんに打ち明けたのは数年後である。その時、「コエー(怖い)」と小峰さんは絶叫していた。 日本の警察官が、拳銃の薬室に1発弾を抜いているというが、暴発や誤発を防ぐには効果がある。自衛隊でも、実弾射撃を行う場合は、射場でも命令があるまで絶対に薬室に弾を送り込まないし、射撃終了後も、薬室を覗き込んで弾が残っていないか点検する規則がある。銃を使用する(射撃)場合、絶対に安全な状態から開始し、絶対に安全な状態で終了することが必要である。 ところで小峰さんの「拳銃王」はおもしろい。コンバット・マガジン誌を読む時は、そんなエピソードがあったと想像しながら読むといい。結構、小峰さんも怖いことをしていると思いながら読むと、面白さが倍増する。写真はコンバットマガジン誌に連載中の『拳銃王』の小峰さん。下の拳銃がベレッタの22口径。40年前にデザインがいいと、アメリカで女性の護身用に爆発的に売れた。 |