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経営危機にひんした日本航空の再建は、事前調整型の法的整理で決着する見通しとなった。昨年破綻(はたん)した米ゼネラル・モーターズ(GM)と同じ手法である。
政府は会社更生法を適用させ、裁判所の管理下に置いて透明性の高い債務処理を目指す。これまでのように日航や銀行団の協議で再生を図る私的整理の案は、退けた。
いったん破綻処理する形になるが、8千億円ともいわれる巨額の債務超過を抱える現状からすれば、やむを得ない判断だろう。
近く、政府や支援母体の企業再生支援機構、主力取引銀行などが詰めを行う運びだ。7千億円以上の公的資金投入や、約3500億円に上る金融機関の債権放棄で合意できれば、日航が更生法を申請する。赤字の国際路線の大幅縮小や人員の大胆なリストラ、高すぎる企業年金の減額に手をつける。今のところそんなシナリオのようだ。
日航は既に何度も銀行側に支援を求め、私的整理の形で再建を図ってきた。ところが長年の親方日の丸の経営体質や、時の政権とのしがらみもあって、不採算路線の見直しなどは前へ進まないままだった。そこに最近の経済危機が追い打ちをかけ、経営は悪化するばかり。これ以上、傷口を広げてはなるまい。
ただ法的整理には「倒産」の印象がつきまとう。利用者離れに加え、海外での信用低下で国際線の運航に支障をきたしかねないという懸念が日航側や銀行団にあるようだ。
燃料や部品など運航に欠かせない取引の債権は特別に保護し、利用者のマイレージも維持する方針というが、実際にどうなるかは未知数の部分も多い。運航やサービスの混乱を、どう回避するのか。政府は周到に準備しておくべきだろう。
日航への助言機関座長である作家の柳田邦男氏は「法的整理は仕事への愛情を損ない、安全に支障が出る」と指摘する。現場での士気低下を防ぐ配慮も欠かせない。
巨額の公的資金を注いでまで日航を再生させる理由は何か。航空路線は遠距離移動に欠かせず、物流など経済活動の動脈だ。成長戦略の柱の一つである観光客誘致の下支えとする方策も求められる。
鳩山政権が発足して以来、方針がなかなか定まらず迷走してきた印象もある。今度こそ腰を据え、国民が納得できる再建策にしてほしい。
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