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予算国会が間近に迫る中で、藤井裕久財務相が辞任し、後任には菅直人副総理兼国家戦略担当相が横滑りすることになった。藤井氏の体調がすぐれず、長時間に及ぶ審議を乗り切れないのが理由とされた。「せっかく予算案という“子ども”を産んでいただいたので」と慰留してきた鳩山由紀夫首相も、やむを得ないとの判断に傾いたようだ。
藤井氏は先の衆院選で、高齢を理由にいったん政界引退を表明。首相に口説き落とされてあらためて立候補し当選。そのうえで財務相に就任しただけに、政権にとっては「扇の要」的な存在だ。辞任のショックは計り知れないが、その日のうちに首相が後任を決めたことで、求心力の一段の低下は何とか避けられた。早急に態勢を立て直すべきだ。
藤井氏は、旧大蔵省主計局出身で政権きっての財政通。かつて非自民連立政権の細川、羽田両内閣で大蔵大臣の経験がある。昨年末、3カ月という限られた日程にもかかわらず、2009年度第2次補正予算案、10年度予算案を立て続けに編成できたのは、官僚ににらみがきく存在感があったからこそだろう。
突然の辞任には、健康以外にも理由があったとの見方もある。
一つは、民主党の小沢一郎幹事長との確執だ。かつては盟友だったが西松問題の対応などをめぐって疎遠となり、今回の予算編成で対立が表面化した。藤井氏が財政規律を優先させたのに対し、公約を重視する小沢氏は強い不満を口にした。加えて、菅氏が政治主導の観点から編成に介入したことにも藤井氏は反発を感じたようだ。
もう一つ、「政治とカネ」が背景にあると指摘する向きもある。03年に民主、自由両党が合併した時の不透明な資金の流れだ。自由党が解散する際、既に支給されていた政党給付金を自由党所属の議員の所属団体に寄付し、国庫への返還を逃れたのではないかという疑惑である。当時の幹事長が藤井氏だった。野党の自民党が追及する構えを見せていた。
内閣の重しだった藤井氏が外れる形にはなったが、後任がこれまで予算案編成にかかわってきた菅氏というのは、無難な選択だったともいえよう。何かと小沢氏の影の力が取りざたされる中で、ここは首相がリーダーシップを示したことを評価したい。
18日から予定される国会の予算案審議は、新政権がめざす国づくりへの第一歩と位置付けられる。子ども手当、高校授業料無料化などの主要政策を実現していくには、10年度予算の年度内成立が大前提となる。
これに対し、自民党は「ばらまき予算」と厳しく追及する構えで、通常国会は冒頭からの波乱も予想される。民主党が掲げる政治主導の面からも、財務相の予算委員会での答弁はとりわけ重みが増す。交代に伴う影響は最小限に食い止めなければならない。内閣が一丸となって万全の体制を整え、説明責任を果たしてほしい。
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