雇われ方によって、働く人たちは二つに引き裂かれている。「正規」と「非正規」。そのために貧困も広がる。このままでは日本の強みである社会の安定も危うくなりかねない。
立ち止まってみるべき時ではないか。昨秋、契約社員ら約300人をすべて正社員化した広島電鉄(広島市中区)の取り組みから考えてみたい。
バス部門の赤字がかさんだ同社は2001年、電車、バスの乗務員の採用を、契約社員に切り替えた。3年働けば定年まで雇われる制度もできたが、賃上げも退職金もない。
入社して正社員との待遇のあまりの違いを肌で感じた契約社員に、不満がたまる。退職者も出るようになった。
「同じ仕事で格差があると、職場の一体感を失う」と改善を訴えてきたのが労組である。かつて二つに分裂していた苦い歴史の教訓から、契約社員も初めから組合員に加えていた。当事者として取り組みに力が入った。
会社は厳しい経営状況の資料も積極的に開示し、組合も、ベテラン正社員を「若い人のために」と説得して賃下げをのんでもらった。3年がかりの地道な話し合いで合意をみる。
何よりも職場の雰囲気がよくなった。契約社員だった人は、将来の設計ができるようになった。気持ちにゆとりが出たせいか、乗客からの苦情やトラブルも半減したという。
日本では今や、働く人の3分の1が非正規だ。政府が昨年初めてまとめた相対的貧困率は15%を超えた。その80%以上が、非正規のワーキングプアとされる。
うちパートについては、パートタイム労働法によって差別的な扱いが一部改善されつつある。
地場のスーパーでも、一定時間以上働くなどの条件で、パートを正社員に登用する制度を始めているところは多い。ある楽器販売会社は、家庭の事情に合わせてパートと社員を行き来できる制度をつくった。先進的な試みだ。
派遣労働者についても、見直しが進んでいる。仕事がある時だけに契約する「登録型」や、製造業への派遣を原則禁じる―などの改正法案が、通常国会に提出される予定になっている。
国際的なコストダウン競争をしているメーカーには、厳しい状況かもしれない。しかし差別待遇をやめれば、社内だけでなく社会的な効果もある。ワーキングプアが減れば消費が回復し、ひいては企業も潤ってくるはずだ。
もちろんすべてを正社員にするのは現実的ではあるまい。それでもいかに実質的に、同一労働同一賃金や公平な待遇に近づけるか。「正社員だけを守る」という企業の感覚も変わる時代なのだろう。
働き方をめぐっては、税を投じて失業者に手厚い保障などをする「解雇されても再就職しやすい」北欧型もある。今後の雇用の在り方について、幅広い論議を重ねていきたい。
【写真説明】広島電鉄の乗務員は全員、正社員になった
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