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脱温暖化の社会 「うちエコ」と「街エコ」を '10/1/3

 買い物どきの常識ががらりと変わった。広島、山口県の大半のスーパーで昨年、石油製品のレジ袋が有料になった。調査では既に客の9割近くがマイバッグを持ってきているという。

 環境にいいとは分かっていても「面倒だから」と後回しにしてきた習慣。それが、あっという間に当たり前となった。エコバッグと呼ばれ、おしゃれのアクセントにもなっている。

 職場や学校で、そして地域でも新しい「当たり前」をもっとつくれないものだろうか。

 電力消費などで家庭から吐き出される二酸化炭素(CO2)の量は増加傾向にある。世帯増もあって2008年度の排出量は1990年比で約34%も増えている。

 低炭素社会づくりに向け、環境省は「うちエコ」と呼ぶ国民運動を進めている。「衣」「食」「住」の省エネ、節電ポイントを挙げ、協力を呼び掛ける。

 昨年暮れ、広島市内であった県主催の「うちエコ」イベント。「カープが負けたら野球のニュースを見ない」といった行動でCO2排出量がどのぐらい減るか。暮らしの場面ごとに紹介する住民グループの取り組みが目を引いた。

 問題の数字を「見える」化し、今日からでも自分にできるエコを考える。生活に根差した発想はとても大切だ。

 輸送時の燃料が少なくて済む地元の食材を買うか、通勤や買い物にどんな乗り物で行くか…。CO2の排出源のうちで約14%を占める家庭の暮らしぶりは、商業や運輸、産業などの排出量にも少なからず影響を及ぼす。

 一方で、石油やクルマに依存した仕組みそのものを根底から見直す努力も要るのではないか。

 化石資源には限りがある。それに日本は資源小国。枯れることのない太陽光などのエネルギー源にどう切り替えていくか、骨太の戦略を描かねばなるまい。

 資源を浪費しない都市や住まいのありようも探るべきだ。公共交通を利用しやすいコンパクトシティー化や省エネ住宅・改修の普及など「街エコ」も課題である。

 広島には社会資本を大切にしてきた経験がある。「クルマの邪魔」と各地で路面電車が消える中、軌道インフラを守ってきた。

 公共交通を生かす仕組みは一層磨く必要があろう。一部の郊外スーパーでは平日は空く駐車場を乗り継ぎ拠点に開放している。そんな取り組みを広げられないか。

 自転車の活用も効果的だろう。温室効果ガスは出ないし、渋滞解消にもプラスだ。欧米や韓国の都市では自転車に乗りやすいまちづくりに拍車が掛かっている。

 なのに自転車には減税もエコポイントもないのはどうしたものか。普及策とともに、安全に乗れ、歩行者とも共存できる道路環境づくりを急ぎたい。

 20年に温室効果ガスの90年比25%削減という目標を掲げた日本社会。「うちエコ」と「街エコ」を両輪とし、新しい常識をつくっていこう。

【写真説明】脱温暖化の暮らし方を紹介した「うちエコ」イベント




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