きょうの社説 2010年1月18日

◎整備進む金沢城 映画公開に合わせ前倒しも
 金沢城内外をめぐる「石垣回廊」が3月に完成し、新年度からは軍都の歴史を刻む旧第 六旅団司令部の利活用と周辺整備が進むことになった。昨年11月には玉泉院丸跡の園路が一般開放されており、今春には宮守(いもり)堀の水堀化と鯉喉櫓(りこうやぐら)台、河北門の復元整備が完了する。

 金沢城は2014年度末の北陸新幹線金沢開業を大きな節目と位置づけ、段階的な整備 が行われているが、金沢城公園でロケが行われた「武士の家計簿」が全国で公開されれば、金沢城への関心はこれまで以上に高まっていくだろう。そうした追い風を最大限に生かすためにも、映画公開に合わせて金沢城復元整備計画を前倒しするような積極さもほしい。

 映画「武士の家計簿」は城下町金沢を背景に、金沢に息づく伝統文化や人情味などを織 り込んだこれまでにない映画である。金沢城公園などでのロケをはじめ、セットも長町武家屋敷そっくりのこだわりで、金沢の魅力を全国発信する。映画は4月に完成、公開は今年冬を予定しており、映像を見て金沢城を訪れる人も増えるはずである。河北門や五十間長屋、旧第六旅団司令部などの施設の利活用も含めて、期待に応える受け入れ体制を整えたい。

 玉泉院丸跡周辺は「石垣の博物館」と称される金沢城の中でも、特に借景となることを 意識してつくられた最高傑作の石垣群が築かれている。市中心部をつなぐ新たな玄関口として県は暫定整備を計画しているが、威容を誇る庭園跡とそこからの石垣の眺めは見応えがあり、金沢城の価値を高める空間として迅速に整備を進めてほしい。多彩な石垣群も「石垣回廊」の完成によって見どころが増える。石垣を見にくくしている丸の内駐車場の撤去も急ぎたい。

 金沢城の魅力が増せば、「歴史都市」の風格に厚みが加わる。公園内の案内方法の改善 や英語ガイドの育成など「もてなし力」もさらに高めて、城の新たな見どころをより多くの県民、観光客らに伝えていきたい。映画公開による金沢城への関心の高まりを、新幹線開業まで持続させるさまざまな手立てが求められている。

◎外国人参政権 法案化はいかにも性急
 政府・与党が今国会提出で調整している永住外国人に対する地方選挙権(参政権)付与 法案は、与党内でも異論がくすぶるなど議論が煮詰まっているとは思えない。鳩山由紀夫首相は「今年が日韓併合100年のタイミングでもある」と日韓の歴史に結びつけて法案成立への意欲を示したが、外国人参政権は憲法や地方自治の在り方にもつながる重いテーマであり、閣僚から「民主主義の基盤にかかわる」との慎重論が出始めたのも当然だろう。

 石川、富山をはじめ、全国の県議会で地方参政権に反対する意見書可決が相次いでいる 。1990年代の自社さ政権時代に両県を含む多くの地方議会で賛成の意見書が可決されたが、反対の流れが強まったのは議会の中心勢力である自民党が民主党との対立軸を鮮明にしたい意図もみられ、その時々の政治的な思惑で賛否が動いているような印象も受ける。地方で議論が深まっているとは言い難い。

 党幹部に推進派が多い民主党が政権を取ったことで法案成立は一気に現実味を帯びたが 、学説も複雑に絡み合い、「政治主導」で性急に結論を出せるほど単純な問題ではないだろう。外交への過度な配慮や情緒論から離れ、腰を据えた冷静な議論が必要である。

 95年の最高裁判決は、憲法15条の公務員を選定・罷免する権利は日本国籍をもつ「 日本国民」にあるとし、地方自治体の長や議員を選ぶ「住民」も「日本国民」とした。判決の傍論で「地方選挙権の付与は禁止されない」と記されたことで反対、推進派の解釈は多様化したが、憲法違反との意見は今も根強く、参政権問題が憲法との関係で緻密な議論が求められていることに変わりはない。

 慎重派には国籍取得要件を緩和し、国籍を取りやすい環境整備を進める動きがある。法 的にも日本人になって選挙権を行使するのは筋が通っており、参政権問題を考える際の大事な視点といえる。

 日本が外国人をどのように受け入れ、権利を保障していくかは今日的な大きな課題であ る。幅広い角度からの検討や地方レベルでの関心の広がりが求められよう。