きょうのコラム「時鐘」 2010年1月18日

 幕内最多勝を達成した大関魁皇の快挙を喜ぶ母親の写真があった。若く見えるので驚いた。64歳だった。息子は37歳。力士が老成して見えるのか、最近の60代が若く見えるのか。そのどちらもあるだろう

職業によって実年齢以上に見える最たるものが相撲取りかもしれない。普通の企業なら30代後半はやっと中堅に手の届くくらい。60代前半の母に30代の息子がいて当たり前なのだが、大関の貫禄が錯覚をよぶ

力士が1番強いのは大関が横綱に昇進する時だ。古くは大鵬や柏戸、輪島が横綱になった時を思い出す。最近では朝青龍か。ほとんど1度しかないチャンスをつかむ緊張感が美しいばかりの技と強さを生む。が、その後の長い人生を考えることはない

普通の人も20歳前後が1番体力がある。気力や耐力を備える30歳前後も勢いではかなわない。人生の行程表に似ているのが大相撲の番付である。大関と横綱の間には厚い壁がある。乗り超えるのは才能か努力かそれとも運か

若くして老成し、頂点を降りてから常識を備えた社会人になり長い人生を送る。色々考えさせてくれるから大相撲は面白い。