社説
福島・雇用急降下/目先の策では改善できない
東北の中でも比較的よかった福島県内の雇用状況が、この1年ほどで急降下し、まったく改善の兆しを見せていない。有効求人倍率は、昨年11月まで4カ月間連続、過去最低に張り付いたまま。全国で下から3番目になってしまった。
雇用状況の悪化は何も福島県に限ったことではなく、全国的な傾向であることは確かだ。ただ、このままでは地域経済が疲弊する一方になる。一時的な雇用確保策で済まないことは明らかであり、何とか地域に根差した職場を生み出すことが迫られている。
一昨年11月から昨年11月までの1年間の有効求人倍率をみると、福島県は極めて深刻な状況に陥っている。一昨年11月の数値は0.58倍だった。全国平均(0.76倍)は下回ったものの、東北では山形県(0.63倍)に次いでよかった。
それが昨年1月には0.48倍と0.5倍を割り込み、3月に0.39倍に、8月から11月は0.33倍にまで落ちた。 昨年11月の数値は、全国で青森県と沖縄県(いずれも0.29倍)に次ぎ、秋田県とともに下から3番目。福島県だけでなく東北の雇用の落ち込みは激しく、6県では0.34倍しかない。全国のブロック別では、九州(0.39倍)や北海道(0.41倍)にも引き離され、断然のワーストだ。
一昨年11月の東北の有効求人倍率は0.50倍だった。北海道(0.43倍)を上回り、九州(0.52倍)ともそう差はなかったことを考えると、低落ぶりが際立っている。
福島県の雇用悪化は、不況の影響をまともに受けているためだ。その象徴的なケースが、会津若松市の富士通グループ企業の人員削減や、アルプス電気相馬工場の閉鎖。どちらも長年にわたって、それぞれの地域を支えてきた企業であり、与える影響は極めて大きい。
立地企業が多いだけに、雇用の調整弁とされた時のダメージも大きくなる。全国的にみると、この1年間で茨城、栃木、群馬の北関東3県の落ち込みが目立つ。栃木県の有効求人倍率は、一昨年11月が0.91倍だったのに、昨年11月は0.38倍と半分以下になった。福島県の産業構造は北関東にも近く、似たような急降下に見舞われているとみられる。
企業の雇用の調整弁とされ、その削減分をほかの分野で吸収できなければ、とめどなく悪化していく。有効求人倍率が0.3倍台で下げ止まる保証は何もなく、全国一律の短期的な雇用確保対策では、もはや改善は期待できないのではないか。
地元で持続可能な雇用を探り、たとえわずかずつであったとしても、働く場を増やす取り組みをしていく必要がある。
2010年01月18日月曜日
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