社説

石川議員逮捕/党の危機管理力が問われる

 前夜に現職議員が、当日は最高実力者の秘書が、検察に身柄を拘束された。民主党は政権交代後初めての党大会をきのう、そんな状況下で開催しなければならなかった。
 鳩山由紀夫首相、小沢一郎党幹事長は「遺憾の意」やら「おわび」やらを口にしたが、事態を打開する手だてと展望が示されたわけではない。

 ダム工事にゼネコン、そして裏献金に政治家の秘書たち。容疑の背景から浮かんでくるのは恐ろしく古めかしい「政治とカネ」の構図である。「検察権力との全面対決」を打ち出して様子見に入る態度も、いったい何度、見せつけられてきたことか。
 捜査の不当性、見込み違いに反論があるのなら、むしろたっぷり時間を取って詳しく説明した方がいい。党内からそういう声が高まるわけでもない。大会前の会議で小沢氏があいさつする場面を突然、非公開に変更したりする始末だ。

 疑惑を抱え込んだ最高実力者を誰がいさめるでもなく、党として独自調査に乗り出す機運も生まれない。政権党が陥った機能不全は、政権交代の新風に期待した有権者の悲劇である。
 政治資金規正法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕されたのは衆院議員石川知裕、公設第1秘書大久保隆規両容疑者ら3人。

 幹事長の資金管理団体「陸山会」の2004年の収支報告書に4億円の収入を記載しなかったことなどが容疑の対象。背景にあるのは、陸山会の土地購入資金にゼネコンからの裏献金が組み込まれていたのではないかという疑惑だ。
 鳩山首相は党大会で「(小沢幹事長に)臆することなく身の潔白を説明し、職務を遂行するよう要請する」と述べた。幹事長続投の要請よりも、「説明」を促した前段に意味を見いだしたいくだりだった。しかし、幹事長会見は開かれなかった。

 首相の語り口からうかがえるのは、小沢事務所の問題ととらえる限定的な視点だ。現職議員がカネにまつわる容疑で逮捕された事態に、党として対応する体制をどう整えるか。政権党としての危機管理の発想は感じられない。
 小沢幹事長は「党大会に合わせたかのように逮捕が行われた」と怒り、「こういう権力行使に全面的に対決していきたい」と述べた。検察からの任意の事情聴取に応じていれば、通常国会前に急きょ強制捜査に切り替えた捜査の方針転換はなかったのではないか。そんな見方に対する反論にはなっていない。

 昨年春、大久保容疑者が最初に逮捕された後、「政権交代を阻む検察の陰謀だ」といった声が民主党から上がった。最大与党となった今、またぞろ「自民党への援護射撃だ」などと言うのはやめた方がいい。
 ごく小さな党派なら、このまま見放されて解体の道を転げ落ちるのも仕方がないが、有権者はそれは望んでいない。政権を担い続ける意欲と自負にかけて、不祥事に即応できる組織力を示してほしい。国会がいたずらに混乱するようなことになれば、悲劇の度合いは倍加する。

2010年01月17日日曜日

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