民主党の小沢一郎幹事長が党大会で、自らの資金管理団体の土地購入をめぐる事件で、検察との対決を宣言した。潔白というなら対決するのも結構だが、何より国民のことを忘れてもらっては困る。
民主党にとっては昨年の政権交代後、初めて開く党大会だった。
本来なら達成感や高揚感に満たされるはずだが、大会前日に党所属の石川知裕衆院議員らが逮捕されたことを受け、緊張感が漂う。
あいさつに立った小沢氏は「大会に合わせたかのように逮捕が行われ、とうてい容認できない。断固として(捜査当局と)戦っていく決意だ」と検察批判を展開した。
党大会での幹事長発言は通常、党の活動報告や予算・決算、活動方針案の説明であり、検察との対決宣言は極めて異例で、異様だ。
鳩山由紀夫首相は党大会前、小沢氏に「どうぞ戦ってください」と支持する考えを伝えた、という。
小沢氏が潔白で、疑惑を解きたいなら、あらゆる機会を通じて、堂々と国民に説明すればいい。
記者会見の場を設けたり、不当な疑惑を受けたと言うなら、国会の政治倫理審査会に審査を申し出るのが筋だ。
説明が正当で、十分に納得のいくものなら、国民は小沢氏を支持し、批判の矛先を検察の捜査方法に向けるだろう。
しかし、肝に銘じてほしいことがある。国民が衆院選で、民主党に託したのは何かということだ。
それは、長く続いた自民党政権で疲弊した国民生活の立て直しであり、検察との対決のために多数を与えたわけではない。
政権と検察との対決という異例の事態に国民を巻き込むようなことは絶対にあってはならない。
自民党など野党側は、小沢氏ら関係者の証人喚問や参考人招致を求める構えを示している。鳩山首相の偽装献金事件も追及材料だ。国会の場で「政治とカネ」の問題の究明を図るのは当然である。
とはいえ、あすから始まる通常国会の最重要案件は二〇〇九年度第二次補正予算案、一〇年度予算案と、その関連法案だ。
小沢氏は、自らの疑惑を晴らすためにも、国民生活への影響を回避するためにも、喚問要求などに進んで応じるのも手だろう。
野党側も、喚問などの実施を審議の条件にするような旧来型の国会戦術はとるべきではない。
与野党の党利党略で国会が混乱し、国民生活に深刻な影響が出るようなら、本末転倒である。
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