外国人参政権 なぜ必要かを突き詰めよ
政府は永住外国人への地方選挙権付与法案について、18日召集の通常国会提出に向けて検討している。
納税の義務を負っているにもかかわらず、行政に参画するための基本的権利といえる選挙権が認められていない。これが永住外国人の現状である。
こうした中で、永住外国人の多くを占める在日韓国人は長年にわたって地方選挙権を求めてきた。1995年には最高裁が「定住外国人への地方選挙権付与は憲法上禁止されていない」との判断を示している。
事は地方住民にかかわる権利義務の問題である。外国人であっても公的な義務を果たしていれば、一定の参政権を持つのは当然だろう。
外国人参政権を認めることは、国際社会における日本の姿勢を対外的に明らかにすることでもある。議員立法ではなく、政府提出が望ましいのは言うまでもない。
だが、この問題では与党内にすら根強い反対意見がある。本気で実現を目指すなら丁寧な議論が不可欠だ。鳩山由紀夫首相はその肝心な点を分かっているのか。これまでの法案提出をめぐる経緯を見ると、甚だ心もとない。
外国人選挙権について政府内にはっきり動きが出てきたのは、小沢一郎民主党幹事長が11日の政府・民主党首脳会議で言及してからだ。
昨年10月の日韓首脳会談後の記者会見で鳩山首相は「国民の思いが必ずしも統一されておらず時間がかかる」と慎重だった。ところが、小沢発言後の12日には、ことしが日韓併合100年であるとして法案提出に積極姿勢を見せた。あまりに唐突過ぎる。
国民新党の亀井静香代表は「国民新党は賛成していない。(選挙権を)得たければ帰化すればいい」と反発している。亀井氏は金融・郵政改革担当相でもある。これで政府提出に持って行けるのだろうか。
もう一つの気掛かりは、小沢氏による参院選戦略の一環との見方が出されていることだ。
民主党候補を支援した実績のある在日本大韓民国民団とのさらなる協力強化や、選挙権付与に熱心に取り組んできた公明党を自民党と分断することが狙いだとささやかれている。
自民党の大島理森幹事長は政府方針に反対しているが、自民党政権が長年の懸案を放置してきた事実を忘れてはいけない。永住外国人の人権問題という側面もある問題を選挙戦略や党利党略と絡めては本質を見失う。
政府、与党内や国会での丁寧な議論を通し、永住外国人問題に対する国民の理解を深める。これも政治に課せられた責任である。事を急ぐあまり禍根を残してはならない。