中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索

ケチな話で終わらない 小沢氏VS検察で立花隆氏 '10/1/18

 検察との対決姿勢をむき出しにした小沢一郎幹事長の続投宣言と、鳩山首相の小沢全面支持発言によって、民主党は検察との正面衝突路線を選択してしまったようだが、それでよいのか。

 この路線は必然的に通常国会での与野党正面衝突を招く。国会は当分の間、予算審議そっちのけでこの問題をめぐる激しい攻防になる。その焦点になるのは逮捕された石川知裕議員の元秘書、金沢敬氏の証人喚問だろう。

 金沢氏は文芸春秋2月号の「消えた五箱の段ボール」で、昨年3月の大久保隆規秘書逮捕の日に小沢事務所で側近たちの手で行われた驚くべき証拠隠滅工作を暴いている。

 側近たちは「これを特捜部から隠せて本当によかった。あと2時間遅かったら全部特捜部に押さえられていた。こんなもの押さえられたら、みんな逮捕だったな」というほど「やばいもの」を段ボール5箱に詰め込み、知り合いの事務所に隠した。その間、側近たちは「中には鹿島の資料も入ってる。西松建設なんか問題じゃないよな」などと話し合っていた。

 これが1月14日に小沢事務所、「鹿島」本社などに地検特捜部の一斉強制捜査が入った最大の理由なのである。いま表面的には「陸山会」の土地取引問題がもっぱらの話題だが、その背景はもっともっと大きいのだ。

 金沢氏はすぐに自民党の勉強会に呼ばれて、もっと詳しく事情を語った。この工作に小沢側近の樋高剛副幹事長が加わっており、「資料が出ていたら、小沢先生を含め全員逮捕だ」と言ったと証言している。

 この証言内容は昨年7月の段階で検察に通報されており、検察の内偵がそれ以来ずっと続いたことも明らかになっている。突然の強制捜査の背景は深いのである。

 このあと事件がどう展開するかはまだ全く予断を許さない。検察の長期にわたる内偵と今回の強制捜査でつかんだものがまだ外から見えないからだ。しかし、いずれにしろ世田谷のケチな土地取引程度の話で終わらないことは確実だろう。

 党大会での小沢の自分の潔白を強調する発言を聞いて、ロッキード事件で、田中角栄に疑惑の目が集中したとき、田中が新聞記者を集めて行った鼻息荒い潔白宣言を思い出した。あれは事件発覚の2カ月後に行われ、一時はその断固たる全否定を信じた人もかなりいた。しかし、3カ月後に田中の電撃逮捕があった。

 小沢の公共工事を利用しての「天の声」による利権分配構造は田中、金丸信がやっていたこととそっくりだと思う。政治家としての末路が田中そっくりにならないことを祈るのみである。

 下手をすると、民主党が丸ごと小沢とともに沈没しかねないと思っていたら、ようやく非小沢派の議員たちが結集する動きがあると聞いてホッとしている。=一部敬称略=(評論家)

 ▽立花隆氏略歴

 たちばな・たかし 1940年長崎市生まれ。東大卒。文芸春秋などを経てフリーに。74年「田中角栄研究」を発表。現在、東大情報学環特任教授、立教大21世紀社会デザイン科特任教授。「宇宙からの帰還」「天皇と東大」など著書多数。




HomeTopBackNextLast
安全安心