裁判員制度

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裁判員裁判:市民感覚生きた判決 検察主張退け、罪名変更--横浜地裁 /神奈川

 市民感覚が随所にうかがえる判決となった。大場達也被告(21)の横浜地裁(川口政明裁判長)の裁判員裁判は「常識に照らしてあと一歩足らない」と検察側主張を退け、建造物以外等放火罪に罪名を変更。別事件で執行猶予中の大場被告の立ち直りを期待し、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年とした。

 「みんなの期待を込めた判決です。(裁判員は)被告が何をしているだろうと一生思ってると思います。更生を期待している人がいることを忘れないでください」。川口裁判長が諭す間、大場被告を見つめる裁判員もいた。

 検察側は現住建造物等放火罪で起訴したが、弁護側は「寮(建造物)まで延焼する認識はなかった」と罪名を争った。判決は、一般市民を念頭に置いたとみられる「一般に抱かれるイメージ」では、傘の素材やバイク本体の耐火性などから「かなり延焼しにくいとのイメージ」だと指摘。大場被告も同様だから、寮への放火罪は成立しないと結論付けた。

 検察側は(1)傘とバイク、柱の近さ(2)「燃え移るかもしれないと思った」との捜査段階の供述(3)バイクは「爆発的に燃え上がるのではという恐怖感すら抱くのが通常」--などから「延焼の認識があった」と主張。だが判決はことごとく退けた。

 多くの捜査情報や知見を持つ検察官と一般市民では「常識」が異なることを示した形の判決に、担当した今村智仁検察官は「今の段階ではコメントできない」と述べた。安藤肇弁護人は「事実認定も量刑も判断が難しい事件で、おおむね主張が認められた」と評価。大場被告は接見で謝意を述べ「すぐに仕事を探しに行きます」と話したという。

 台風18号の影響で裁判員1人が解任されたが、裁判員5人と補充裁判員1人は判決後に地裁で会見。被告人質問で「出直すという言葉が聞きたい」と尋ねた裁判員(1)の女性は「早く立ち直ってほしいという気持ちから声をかけた。私も息子がおり、母親的な気持ちになった」と明かした。【杉埜水脈、山田麻未】

毎日新聞 2009年10月9日 地方版

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