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社説

長野市民会館 民意を見極めたのか 1月12日(火)

 長野市の市民会館建て替え問題が、新たな段階に入った。建設予定地について、市が権堂地区を第1候補とする基本構想案を発表している。

 経済・財政状況は依然厳しい。構想が市民から支持されるかどうか、鷲沢正一市長も議会もしっかり見極める必要がある。

 建設候補地は、現在地や長野駅前も挙がっていた。権堂のメリットは、この地区の再開発事業と組み合わせてまちづくりの効果が期待できることだという。

 質の高い音楽や演劇に対応できる拠点とし、子どもの文化芸術育成の場とも位置付けている。

 総事業費は77億〜79億円で、合併特例債などを利用し市の実質的負担を少なくすると説明している。特例債利用は、2014年度末までの完成が条件となる。

 建て替えることの是非、建て替え場所について、市民の間には今もさまざまな意見がある。十分な理解が得られないまま建設を急げば、問題を残すだろう。

 市はこれまでも市民の意見を聞いてはきた。大学教授や公募委員らでつくる検討委員会も建て替え支持の提言書を出している。

 それでも、市民全体の新会館建設熱はそれほど高くない。市長選前の昨年10月、信濃毎日新聞社がまとめた世論調査では、建て替えが必要・どちらかといえば必要は計45%、必要ない・どちらかといえば必要ないが計49%だった。

 優先してほしい課題では、福祉・医療、教育・子育て、市財政の健全化が上位を占めていた。

 市長選の後、市が「市民会議」を開き賛否両論の意見を聞いたが溝が埋まった感じは少ない。

 市議会は意見集約の場として、論議を深めるべきだ。国政の流れは「コンクリートから人へ」と変わった。その中で新会館を造る意義、開館後の運営方法とコスト、合併特例債を中心部の施設に使うことの是非、周辺部の振興策も含めた論議に期待する。

 「箱もの行政」に対して、納税者からの批判が高まっている。それとは反対に、将来を見据えた高度な文化施設を願う人たちもいる。難しい選択である。

 柳田清二佐久市長は、前市政が進めた総合文化会館建設の是非について住民投票を行う考えだ。

 長野市は今後、基本構想案の各戸配布や市民ワークショップを行う。内容をよく説明し、調査方法も工夫して民意を的確に把握することが大切だ。市長の力量が問われる。理解が得られないなら、軌道修正も視野に入れるべきだ。

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