日本相撲協会の役員改選がいつになくにぎやかだ。台風の目となっているのが元横綱の貴乃花親方である。
理事選挙に立候補の意思を示し、所属する二所ノ関一門で候補者の調整がつかなかったことから、ついに一門を飛び出すと表明した。
一門とは50余の相撲部屋による五つのグループである。年功序列を重んじ、それぞれ理事を送り出すのが慣例となってきた。
貴乃花親方はしきたりを破る行動に出た。定員10人の理事選挙は、8年ぶりに投票に持ち込まれる公算が大きくなった。
選挙は、きょうから始まる初場所後に行われる。どんな顔触れがそろうのか、見守りたい。
貴乃花親方は現役時代に優勝22回を誇り、“若貴ブーム”で土俵を盛り上げた。2年前には当時35歳の若さで、役員待遇の副部長に抜てきされている。
将来を期待され、いずれ協会のトップに就くとみられてきた。にもかかわらず一門の後ろ盾を失ってまで、なぜ名乗りを上げたのか。多くのファンが理由を知りたがっているに違いない。
相撲界はこのところ、不祥事ばかりが目立つ。力士暴行死事件や大麻問題など、土俵外の不名誉な話題が関心を呼んだ。協会の対応は後手に回り、北の湖理事長は辞任に追い込まれた。
地に落ちた信頼を取り戻し、再び熱気ある土俵にすることが急務だ。1年余り前に外部役員が導入された。組織の透明性を高める努力が大事である。
貴乃花親方は相撲道への姿勢が実直で、改革の意欲が強いといわれる。ファンサービスやチケット販売方法についても持論を展開している。中堅、若手の親方の中に支持があるようだ。
今回の決断は、大相撲の未来に危機感を募らせた結果とみることもできる。理事になれるか分からないけれど、熱意を無にしない対応を武蔵川理事長らに求めたい。
日本人力士の影は相変わらず薄い。昨年は、横綱白鵬が年間86勝の最多勝記録を樹立するなど、全6場所でモンゴル勢が優勝した。日本人の優勝は2006年初場所の玉ノ井親方(元大関栃東)までさかのぼる。
ことしも白鵬が主役の1人になるだろう。もう1人の横綱朝青龍もこのままでは終われない。
土俵の国際化は時代の流れだけれど、横綱を脅かす日本人力士が台頭してこないのは寂しい。貴乃花親方の心意気に奮起して多くの若手が活躍してもらいたい。