警視庁警備1課長だった92年8月、首相官邸に右翼の男がトラックにガスボンベを積んで突入しようとした事件が今も忘れられない。不審車両のナンバーを事前にチョークで官邸前の道路に書き出していた機動隊員がトラックに気づいて進入を阻止、大事に至らなかった。「一線の部下に具体的にとるべき行動を指示したことが功を奏した」。「部下への指示は具体的なものにしたい」というのがトップとしての信条だ。
学生時代、大学紛争を目の当たりにし「腕力で自分の意見を通そうとするのはおかしい」と警察の道を志した。
警備畑を歩み、00年の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)、08年の北海道洞爺湖サミットなどの警備指揮に携わった。
今年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の警備には「日本警察の屋台骨の警視庁として、首都圏警備に力を尽くしたい」という。
警視庁勤務は07年8月までの警務部長以来。同庁広報課長の時には部下の昇任試験対策に刑法などを解説したカルタを考案、アイデアマンとしても知られる。
APEC警備のほかにも、警察庁長官狙撃事件や八王子スーパー射殺事件など時効が迫る重要未解決事件の捜査など課題も多い。
「警察官は事件の時に宇宙からやって来るウルトラマンでなく市民とともにあるスーパーマンたれ」と部下を励ますつもりだ。【遠山和彦】
【略歴】池田克彦(いけだ・かつひこ)さん 神戸市出身。京大法卒。76年警察庁入り。著書にはうんちく話を集めた「知恵の話(わ)」など。56歳。
毎日新聞 2010年1月16日 0時01分(最終更新 1月16日 0時40分)