「悪の葉っぱに斧を向ける人は千人いても、根っこに斧を向ける人はひとりしかいない」H・D・ソロー
今日の日本社会の現状を皆さんはどのように考えているのでしょうか。
物事を考えるヒントになればと思い私が考えている「日本社会の根っこ」について書いてみたいと思います。
まずは少子化の問題です。
結論から言いますと、「現在の日本の少子化現象は日本人が選択していたこと」ということです。
つまり、日本は国の人口を減らすという政策を選択してきたということです。
40年以上前に話はさかのぼります。
1974年の8月、国連の主催する世界人口会議がブカレストで開催されました。
この会議において、先進諸国はすみやかに人口増加率をゼロにすることで一致しました。日本も人口静止の方針を支持しました。
なぜ、日本も人口静止の選択をしたのか。
理由は簡単です。石油資源が枯渇することの影響を恐れたからです。
その当時は、石油の埋蔵量が35年分とも40年分とも言われていました。
石油がなくなれば・・・車は走らなくなります。
アメリカのみならず、全世界の経済が動かなくなります。
「パイはこんなに小さい」食べる人(人口)を減らさないと滅亡につながる、多くの日本人がそう考えた結果が今日の人口減少社会なのです。
それから40年以上経ちますが、数年以内に石油がなくなるという話は聞きません。反対に新たな油田、ガス田が次々と発見されています。
何を意味するのでしょうか。私は「アメリカにやられた」と考えています。アメリカの石油獲得戦略の思惑に気付かなかったのです。
イラク戦争の正当性と大量破壊兵器の関係と同じです。40年前の「石油の埋蔵量」の信憑性も疑わざるを得ません。
しかしです。私はアメリカが全面的に悪いとは決して思ってはおりません。
冒頭の言葉通り、根っこに目を向けなかった日本の政治家や学者が悪いのです。
日本人が日本の人口を静止させる、つまり人口を維持するための施策をとらず、減らす施策ばかりを選択してきた。
その結果が今日の人口減少社会です。
子供手当てを拡充するという日本政府の施策は「葉っぱに斧を向ける」ものです。根っこには目をむけてこなかったということです。
ここでアメリカという国について少しだけ考えてみたいと思います。
アメリカは誰もが知る車社会です。私もビジネスにおいても観光においても必ずレンタカーを活用します。車がないとほとんど移動できない社会だからです。
アメリカで生活している人たちにとっては、石油は生活必需品です。
石油がなくなるとアメリカという国家が滅亡してしまうといっても過言ではありません。
ですから、石油を追い求めるのです。そのためには手段を選びません。
考え方を変えればアメリカはそれだけ「弱い国」であるとも言えます。
反対に公共交通機関というインフラが整備されている日本のほうが「強い」と言うこともできるでしょう。
気候変動枠組条約、京都議定書にアメリカがサインしない理由の一つがこの点であると思います。アメリカ国民は、世界中から「弱いものいじめ」をされていると考えているかもしれません。
もう一点は「温暖化で国土が少しくらい狭くなってもアメリカには影響は少ない。温暖化の環境のなかでも生き抜いていくのがアメリカ国民だ」と考えているのでしょう。
話をもどしますが、日本社会はこの何十年「小さいパイを奪い合う」というマインドが「根っこ」でした。
一流大学への進学、一流企業への就職、国家予算の奪い合いなど、すべてが「競争」であり「勝った、負けた」「やるか、やられるか」「手段を選ばない」という社会になってしまいました。
刺客選挙に耐震強度偽装問題など、すべてこのマインドが根っこにあることが真因です。残念なことだと思います。
以前に紹介したスティーブン・R・コビー著「7つの習慣」では、このようなマインドを「欠乏マインド」と呼んでいます。
「欠乏マインドとは人生を一個のパイと見て、他の人が大きな一切れを取ると、自分の取り分が減ると考える。それは、人生をゼロ・サム・ゲーム(一方のプラスが他方のマイナスになり、両方の得点の総和が必ずゼロになるゲーム)と見るパラダイムである。このパラダイムを持っている人は、すなわち人に与えることは自分の取り分が減ると考えてしまう」
ホスピタリティの概念は、欠乏マインドとは反対のマインドです。
7つの習慣では「豊かさマインド」と称されています。
「豊かさマインドとは、『この世界には、私の夢をかなえるのに十分なだけの天然資源、ヒューマン・リソースがある』、そして、『誰かの成功によって私の分が減ることはない。同様に私の成功が必ずしも他人の失敗を意味するわけではない』という骨身に滲みこんだ信念である」
日本社会は「欠乏マインド社会」です。一方、ディズニーランドは「豊かさマインド社会」です。
ディズニーランドが人々をひきつける「理由」はなにか、その「理由」の根っこの部分がこの「豊かさマインド」であり「ホスピタリティ・マインド」であるのです。
根っこに目を向ける姿勢は大事です。私も「この姿勢を忘れないようにしたい」と常々思っています。
2005年12月21日
ホスピタリティの根っこと「豊かさマインド」
posted by 株式会社外部の専門家 at 14:05 | メルマガ紹介