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【大リーグ】

仁志“鋼の意志”でオファー待つ メジャー30球団へ手作りDVD

2010年1月16日 紙面から

米国からのオファーを待ち、トレーニングを続ける仁志。リミットは3月いっぱいだ!=横浜市内のグラウンドで

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 昨季限りで横浜を退団し米球界移籍を模索する仁志敏久内野手(38)が本紙の単独インタビューに応じ、現在の心境を語った。プロ14年目で戦力外通告を受けたベテランに現段階で米球界からのオファーは届いていないものの、現役続行を熱望し自主トレを継続。常総学院−早大−日本生命−巨人とエリート街道を歩み続けた男が最後の“死に場所”として米球界に身を投じる構えだ。 (聞き手・伊藤哲也)

 −まず現在の状況は

 仁志「オレの場合は9割以上の確率でマイナー契約になる。複数の米関係者に橋渡し役になってもらっていて、今はオファーを待っている段階。自分で編集したプレー集のDVDを大リーグの30球団に渡してもらっている」

 −じっとオファーを待つ日々はつらい。実際に心が折れることはないか

 「興味がある球団が出ては消え、出ては消えている。ただ自分が考えているリミットは3月いっぱい。いつまでも先行きが決まらないまま、40歳手前の男が夢だけを持ち続けているわけにもいかない。(オファーがなければ)潔くやめる」

 −なぜ現役続行を選択して米球界を目指すのか

 「すべては自分の将来のため。自分が指導者となった時に、引き出しを持っていたい。アメリカの野球を経験したのとそうでないのでは、教える相手が小学生だろうが、プロだろうが、説得力が違うと思う。これから日本から行く選手は増えるだろうし、また帰ってくる選手もいる。異文化の中で野球をやることに意味があるだろうし、自分の目で確かめたい」

 −日本の他球団に興味はないのか

 「横浜の最後に味わったことはもう繰り返したくない。実績あるベテラン選手の宿命なのかもしれないが、結果が出なくなると『仁志』という人間に対して良くも悪くも周囲が気を使い始める。球団も、首脳陣も、マスコミも…。そうなるともういるだけ迷惑。これは、もし次に日本のどの球団に行っても、同じ境遇で野球をしないといけないんだなと思った」

 −周囲の雑音を一切気にせずに、思い切り野球だけに没頭したい?

 「そうなる。とにかく真っさらな世界に飛び込みたい。単純に力だけで判断され、ダメなら仕方がない世界。もし、どこかの球団とマイナー契約ができても実際、すぐ切られるかもしれない。だけど、それでもいい。周囲の目も気にせず、誰にも気を使わず、しゃかりきに野球がしたい」

 −高津(臣吾、台湾・興農)や藪(恵壹、元ジャイアンツ)のように一時代を築いた選手がどの国であろうと、現役に固執し続ける例も少なくないけど…。

 「投手と野手の違いはかなりあると思う。投手は健康であれば投げられる。需要があるのは投手だし、そのへんの難しさは痛感している。ただ現役に未練があるとかないじゃなくて、自分の中で現役選手として(能力が)許容範囲だとは思っている。もちろん、年齢とともに柔軟性なんかは落ちていると思うけど、野球の動きに関しては衰えていないつもりだよ」

 −巨人時代にFA宣言、メジャー入りを視野に入れたこともあったが

 「あの時は今思うと自分自身、煮え切らなかった。巨人に(メジャーとの交渉のため)待ってもらって失礼だったし、やるからには腹をくくらないとね。やはり、退路は断って行動しないといけなかった」

 −今オフもフィジカル面のトレーニングを中心にみっちり練習をこなしている。たとえ先行きが不透明でもモチベーションは維持できている?

 「トライアウト的なこともあると聞いているし、とにかくいつ呼ばれてもいいように、準備だけはしておかないといけない。サッカーやアメフットの動きを取り入れたフィジカルトレーニングを取り入れて、今年で7年目。これをオフにやってから下半身など故障の心配がなくなった。まだやれるという自信にもつながっている。この前もジーンズをはこうと思ったらケツがでかくなり過ぎて入らなかった。38歳だけどまだ肉体面は衰えていないと感じている」

 −最後に、アメリカでプレーできることになった時の自分をどう想像しているのか

 「まず1年間、どういう流れでチームが動いていくのか。細かい部分も含めてそのシステムを自分の目で把握したい。力はたとえ、マイナーでも自分より断然上の選手もいる。その中で自分に何ができて何ができないのか。こればかりは、飛び込んでみないとわからない。38歳の年齢の男っていろんな思いが入り交じっていると思う。現実的なこともあるし、夢も持ち続けたい。野球選手に限らず、そんな揺れる気持ちをみんな持っているんじゃないかな。オレは最後の最後に、滝つぼに飛び込んでみようという心境だよ」

 

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