きょうのコラム「時鐘」 2010年1月17日

 阪神大震災から15年。あの大災害を父母の思い出や記録でしか知らない世代が存在する時代になった。語り継ぐ大切さが時間とともに重みを増す

「1・17は忘れない。記憶を未来につなぐ」。震災で生まれた合言葉だが、思いもかけぬ形で阪神の記憶は各地に広がった。玄界沖、中越、能登、中越沖、宮城・岩手と各地で大地震が続いたからである

この15年間で日本中に被災者が生まれた。地震を体験しなかった人も次の世代も、またいつ被害者になるか分からない。防災の心得を語り継ぎ、国民共有の知恵にする重要さが、合言葉とともによみがえるのである

一連の震災の中で幸いにして記録されていないのは大雪の中で大地震に遭う体験である。未経験だがいつか必ず来る。雪は家屋倒壊や避難路に大きく影響する。能登半島地震後に中央防災会議が「降雪期における防災態勢強化」の通知を出したが、具体的動きはまだない

積雪期の防災態勢を未然に整えておくのは北陸の責務だろう。久々に雪の中で迎えた「1・17」である。未来に生かせる北陸発の防災知恵を形にして明日に備えたい。