小沢一郎民主党幹事長の団体をめぐる政治資金問題は、新局面に入った。東京地検の捜索がゼネコンにも及んだ点が注目される。違法行為を小沢氏が否定するなら、もっと具体的な説明を聞きたい。
小沢氏の資金管理団体「陸山会」、事務担当だった石川知裕衆院議員の事務所…。東京地検が家宅捜索に踏み切ったのは、陸山会が二〇〇四年に購入した東京都内の土地取引で、政治資金規正法違反の疑いが持たれているからだ。
その購入費用に「小沢氏から借りた現金四億円」を充てたと石川氏は供述したという。四億円の原資解明こそ、今回の強制捜査のねらいといえよう。
石川氏はこのカネを政治資金収支報告書に記載しなかったことも認めているという。不記載が明確ならば、原資が解明されずとも、同法違反に問うことは可能だろう。だが、「単純ミス」で不記載の場合と、表に出せない「闇献金」だった場合では、悪質さの度合いが異なる。
特に大手ゼネコン「鹿島」が捜索対象となったことは見逃せない。小沢氏の地元である岩手県のダム工事を受注した企業であるからだ。原資に「闇献金」が含まれている可能性があると、東京地検はみているのだろう。
下請けの中堅ゼネコン幹部からは「二回で計一億円を小沢氏側に提供した」という供述も得られているという。焦点が「闇献金」の有無にあるなら、捜査は尽くされなければならない。
小沢氏は名古屋市で「法に触れるようなことをしたつもりはない」と述べた。だが、具体的な事実関係への言及は、これまで「差し控える」の回答に終始している。これでは“沈黙”と同然だ。
共同通信の直近の世論調査では、小沢氏が説明責任を「果たしていない」とする回答が85%にのぼった。地検の参考人聴取にも応じていない。「小沢VS検察」の構図で、さまざまな憶測を呼んでいる状況でもある。潔白を主張するなら、小沢氏は積極的、具体的に国民に語りかけるべきだ。
十八日から始まる国会では、野党の厳しい追及が必至だ。めりはりの利いた議論で真相究明につなげてほしい。
民主党自身の自浄機能も問われている。政権交代に託した国民の期待には、ゼネコンと癒着した「政治風土」からの決別もあったはずだ。党として、この問題の実態解明に乗り出せば、国民も期待を寄せよう。
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