公立高校は授業料の実質無償化が始まるが、大学教育への公的支出は低水準だ。学生間の経済格差が広がっていく。人材育成のためにも学生への奨学金や授業料減免といった支援策を拡充したい。
文部科学省は二〇一〇年度予算案に高校授業料の無償化として三千九百三十三億円を計上した。公立の授業料は徴収せず、国と地方が負担する。私立の生徒には所得制限なしで年約十二万円を支給し、低所得世帯には年収に応じて上乗せが行われる。
高校無償化は民主党が政権公約に掲げた目玉の一つだ。日本の高校進学率は約98%に達している。「人への投資を増やし、若者を社会全体で支える」という理念からは当然の施策といえよう。
ただ、地方負担分が生じることに地方から反発が出ているし、一律の無償化では、すでに授業料減免を受けている生徒は恩恵を受けないといった問題が残る。
「人への投資」というのであれば、高校生にとどめず、大学生への支援も欠かせない。人材育成は日本の生命線であり、大学生支援こそ、重要施策ではないのか。
ところが、日本は高等教育への公財政支出が貧しい状況が続く。経済協力開発機構の調査では、〇六年国内総生産に占める日本の大学教育などへの公的支出は0・5%だけだった。加盟国平均の半分にすぎず、最下位だ。
日本は大学教育にかかる私費負担の割合が68%と、加盟国平均の二・五倍もある。この負担が家庭の家計を圧迫し、少子化が進む要因の一つにもなっている。
高校無償化制度が浸透していけば、家庭は子供が大学に進む段階で相当な経済的負担を抱えることになる。現状でさえ、親の収入が子供の大学進学に影響しているとされる。今後、経済格差が進学格差になっていくおそれがある。
一〇年度予算案では大学生への奨学金事業は貸与型の対象者を三万五千人増やし、百十八万人にするという。貸与型は返還滞納者が増えており、回収方法を検討して返還率を高めなければならない。
奨学金事業は給付型を拡大するのが筋だ。財源の問題はあるが、諸外国と比べ、依然として見劣りする内容と言わざるを得ない。
日本の大学進学率は五割を超えている。「社会に出るまで切れ目なく、学びを支援していくことが必要だ」(川端達夫文科相)というのなら、大学の費用も国が相当分を負担するべきだろう。
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