社説

阪神大震災から15年/急ぎたい病院の耐震化  

 1995年の阪神・淡路大震災からあすで15年になる。
 折しも、カリブ海のハイチで大地震が起きた。倒壊した建物のがれきの下に、どれだけの人が取り残されているのだろう。被災地の惨状を伝える映像を見るにつけ、15年前の悲しみの記憶が呼び起こされる。
 24万棟の家屋が全半壊し、6400人に上る死者の8割は建物倒壊による圧死だった。せめてもの救いは、得られた教訓が国内の防災対策を前進させる力になったことだ。

 同じ年の12月には、耐震改修促進法が早速施行され、新耐震基準(81年施行)を満たさない古い建物の診断や改修を進める機運が高まった。2006年には法改正され、病院や学校などの改修を加速させるため、自治体に耐震改修促進計画の策定を義務付けた。
 新潟県中越地震や岩手・宮城内陸地震、中国・四川大地震など国内外で大きな震災があるたび、備えの大切さが叫ばれ、耐震化は徐々に進んだ。

 しかし、決して十分ではない。厚生労働省の集計で病院の耐震化率の低さが明らかになった。全国8600の病院中、全建物が震度6強以上の地震に耐え得る基準を満たした施設は全体の56.2%だった。
 このうち、震災時の医療拠点となる災害拠点病院と救命救急センター(598施設)に限ると62.4%。10年度の目標値71.5%の達成は危うい。

 東北の病院では、山形、宮城、青森、秋田各県が60%台で全国平均を上回るが、岩手、福島は40%台と最低レベル。災害拠点病院・救命救急センターでも、山形を除く5県でそれぞれ2〜5施設が基準未達成だった。
 肝心の病院がこんな状況では心もとない。阪神大震災では700カ所以上の医療機関が全半壊した。機器類も壊れ、運び込まれても緊急治療を受けられずに被害が拡大したとされる。病院を守ることは、取りも直さず地域住民の命を守ることになる。その認識を共有したい。

 各県の取り組みの差は、防災意識や財政事情だけが理由ではないだろう。入院患者を抱えながらの改修工事には限界がある。地域の実情に配慮した国の支援策が求められる。

 国は09年度補正予算で約1200億円の臨時特例交付金制度を創設し、自治体や民間事業者の取り組みを促している。工費の2分の1を助成するこの制度は、全国で約60の拠点病院などが活用を予定しているという。
 病院のほか学校や公民館などの公共施設、対象1130万戸とされる住宅の耐震化も急がねばならない。いずれにしても最大の課題は財源だ。

 公立小中学校の耐震化率は昨年4月時点で67%まで向上しているが、文部科学省が概算要求した10年度の学校耐震化費2700億円は削りに削られた。結局、前年度当初比19億円減の1032億円になった。
 国や自治体は耐震化予算を惜しむべきではない。対処の仕方が分かっているのに手を打たなければ、それは「人災」だ。震災15年の節目に肝に銘じたい。

2010年01月16日土曜日

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