社説

陸山会捜索/捜査の転換は何を示すか

 18日には通常国会が始まる。その前に小沢一郎民主党幹事長の事情聴取を済ませた上で、当時の秘書2人を在宅起訴するだろう。捜査の見通しはそう伝えられていた。

 陸山会(小沢氏の資金管理団体)の土地購入問題をめぐって、東京地検特捜部が陸山会事務所のほか大手ゼネコン鹿島の本社、東北支店(仙台市)など関係先を政治資金規正法違反容疑で家宅捜索した。

 任意から強制捜査への方針転換に見える。その事情は今、いつもながらに検察の口からは語られない。小沢氏本人も、秘書の一人で現在は民主党の議員席に座る石川知裕衆院議員も語ろうとしない。

 もどかしさや憤りの中で目を凝らしてみよう。政権最大与党の最高実力者がカネにまつわる疑惑を持たれても、その解明は結局、捜査の強制力に委ねられてしまう。浮かんでくるのは、実に古めかしく、寒々しい旧来の光景である。

 2004年10月の土地購入当時、陸山会の事務を担当していた石川氏が任意の事情聴取を受けたのは先月27日。検察は今月5日、会計責任者だった大久保隆規被告(公設第1秘書、西松建設献金事件で公判中)からも任意で聴取し、小沢氏に参考人聴取に応じるよう要請した。

 新年度政府予算案の編成作業終了を見計らって任意捜査を進め、国会開幕前に刑事処分を終える。段取りはそうだったと映る。石川氏と大久保被告の説明が合理的で、小沢氏が聴取に応じていれば、強制捜査の着手はなかったのかもしれない。

 外形的な疑いとして問われているのは、土地を購入した時の資金4億円を政治資金の収支報告書に記載しなかった点。家宅捜索でその不記載の背景事情を鮮明にする資料が得られたかどうかが焦点になる。

 鹿島、西松建設などが受注した胆沢ダム(奥州市、国土交通省発注)をめぐって、下請けに入った水谷建設から小沢氏側に渡った5000万円が、土地購入資金に充てられたのではないか。関係者の話から浮かび上がっているのは、「天の声」とゼネコンが公共工事の談合にかかわる昔ながらの疑惑だ。

 昨年3月、大久保被告が逮捕された時、小沢氏は不公正な権力行使、不当捜査だと検察批判を展開した。今回、その語り口は影を潜めたようにも見えるが、疑いの中身に触れる説明は避けたままだ。

 石川氏も口を開かず、民主党内から2人に詳細な説明を促したり、党として調査に乗り出したりする動きが出る気配はない。政権最大与党の自浄能力は今のところ無きに等しい。

 わたしたちは本当に、旧弊を断ち切る政権交代を実現させたのか。有権者は嘆かわしい思いにとらわれている。政治不信が捜査への期待となって膨らむのは、本来、健全な現象ではないが、嘆きの行き場は当面、捜査の進展に求めざるを得ない。

 強制捜査に踏み切ったことで、検察は解明に全力を尽くし、詳細を有権者に説明する責任を負った。そう自覚してほしい。

2010年01月15日金曜日

Ads by Google

△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS
  • 47CULB