インターネット検索最大手の米グーグルが中国政府に対し、ネット情報の検閲をやめるよう求め、米政府と中国が協議することになった。中国では外国企業に対するサイバー攻撃も頻発している。民主主義や人権の擁護にはネットの「表現の自由」は不可欠であり、中国政府には誠意と良識のある対応を望む。
中国政府への要望は、グーグルの法務責任者が自社のサイトで明らかにした。同社は2006年に中国市場に参入し、政府の要請に従い、情報の一部を除外している。しかし政府の検閲やサイバー攻撃がこれ以上続くなら、中国市場からの撤退も辞さない方針を表明した。
中国がネット検閲を強化したのは08年3月のチベット騒乱がきっかけだ。グーグル傘下の動画共有サイト「ユーチューブ」に、個人が撮影した暴動の様子などが映像で公開されたことから、中国政府がさらに検閲を強化してきたという。
グーグルが提供する無償メールの「Gメール」に対しても、昨年12月、人権活動家の情報を盗もうとするサイバー攻撃があった。攻撃は金融、メディアなど20社以上の外国企業が対象となっており、こうした問題についても中国政府は有効な対策をとらなかったとしている。
グーグルの指摘を受け、クリントン米国務長官は「非常に深刻な懸念と疑念を抱いている」との声明を発表。中国外務省の報道官は「我々のインターネット管理は国際的なやり方に合致している」と反論した。米政府との協議でも中国の立場を主張していく考えを示した。
グーグルが中国に進出した際、政府の検閲を容認したことには批判が多かった。中国では海外と国内をつなぐインターネットの基幹網を政府が管理している。今回、同社が中国政府に異を唱えたことで、中国に対しネットの表現の自由を求める動きが広まることを期待する。
中国政府はネット検閲のほかにもハイテク分野への規制を強化している。昨年は「青少年を有害情報から守る」という名目でネット閲覧規制ソフトのパソコン搭載を求めたり、輸入ハイテク製品に対し機密情報の強制開示を求めたりした。
だが世界第2の経済大国になろうという国が、表現の自由を阻み、過度な規制を設けるのは許されない。中国の検索市場は地元の百度(バイドゥ)が6割、グーグルが3割のシェアを持つが、グーグルが撤退すれば、中国国民も表現の自由や選択の自由を制約される。国際規範にのっとったルール作りが必要である。