鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」(友政懇)を巡る偽装献金事件で、東京地検特捜部は24日、会計事務担当だった勝場啓二・元公設第1秘書(59)を政治資金規正法違反(虚偽記載、不記載)で在宅起訴し、会計責任者だった芳賀大輔・元政策秘書(55)=現私設秘書=を同法違反(重大な過失)で略式起訴した。虚偽総額は約4億円に上る。鳩山首相は東京都内のホテルで記者会見し、「まったく承知していなかった」と関与を否定しながらも「責任を痛感している。関係者、国民に改めて深くおわびを申し上げます」と謝罪した。進退に関しては「政治家としての使命を果たすことが私の責任だ」と述べ、首相を辞任する考えはないことを強調した。(2、3面にクローズアップ、社会面に関連記事、5面に首相会見要旨)
首相は「(国民からの)『鳩山やめろ』という声が圧倒的になった場合、尊重せねばならない。元々首相の職にかじりついてもやりたい、という思いでいるわけではない」とも発言し、世論の動向次第では退陣を考慮する意向も示した。
首相は会見で「お金は長年にわたる信頼からすべて安心して(起訴された元公設)秘書に任せていた」と釈明し、「不自然さや疑問は感じなかった。不徳のいたすところだ」と陳謝した。
母親からの資金提供に関しては「なぜ知らなかったか国民が疑問に思うのは当然だが、親や周りの者とお金の話を直接することはほとんどなかった」と述べたうえで、02年以降の提供額を「12億6000万円」と明かした。これを贈与と認め、6億円超の贈与税を支払うと説明した。
また、首相は「私腹を肥やしたことは一切ない」と強調。使途を十分把握していなかったとして、「公認会計士にチェックを委託し、過ちを繰り返さぬようにする」と約束し、「今後母からの提供は受けない」と語った。
来年夏の参院選への影響に関しては「まったく影響ないとは考えていない」と述べた。
首相は同日、東京地検に提出した上申書の概要と弁護士による調査報告書も公表した。【山田夢留】
東京地検特捜部は鳩山首相について、勝場被告との共謀の事実がない▽会計責任者の選任に過失はない--ことなどから容疑不十分で不起訴とした。これで首相を巡る一連の事件の捜査を終えた。
起訴状によると、勝場被告は04~08年、友政懇の収支報告書について、個人献金欄に死亡していたり、実際には献金していない延べ270人の寄付者名を記載した2985万円▽記名の必要がない5万円以下の「匿名献金」約1億7700万円▽パーティー券収入約1億5300万円--の計約3億5900万円を水増しし提出した(虚偽記載)とされる。
また、首相の関連団体「北海道友愛政経懇話会」(北海道友政懇、室蘭市)に首相の実母安子氏(87)と実姉から05~08年、毎年各150万円、計1200万円の献金を受けながら収支報告書に記載せず(不記載)、06~08年のパーティー券収入3000万円を虚偽記載したとされる。
安子氏からは08年までの5年間で約9億円が勝場被告にわたり、このうち約1億円と首相の自己資金約2億6000万円が友政懇の虚偽記載の原資となったとされる。
関係者によると、勝場被告は「個人献金額を増やし、国民から支持されている政治家に見せたかった」と供述。北海道友政懇の不記載については「『実母と姉が複数の首相関連団体に寄付していることが、1政治団体につき1人当たり寄付は150万円までと定めた規正法の趣旨に反する』と報道され、記載しないよう指示した」と説明しているという。
一方、芳賀秘書について特捜部は「収支報告書をチェックしていれば容易に虚偽記載に気付くはずで、会計責任者としての責務を怠った」として略式起訴し、東京簡裁は同日、罰金30万円、公民権停止3年の略式命令を出した。重大な過失の適用は極めて異例。【岩佐淳士、大場弘行】
毎日新聞 2009年12月25日 東京朝刊