
日本のSFアニメブームの先駆けとしてその名を歴史に刻む『宇宙戦艦ヤマト』。テレビシリーズとして登場してから35年、劇場版の4作目となる『完結編』から26年──。多くのファンに愛され続けているその“ヤマト”が2009年12月に『復活編』としてスクリーンに登場する! なぜ、今このタイミングでヤマト復活なのか? 『宇宙戦艦ヤマト』の生みの親である西崎義展監督に話を聞いた。
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『宇宙戦艦ヤマト 復活編』は以前から温めていた企画だったのでしょうか?
『完結編』を作ってから26年が経つ。そろそろ新作を作った方がいいんじゃないかと思ってね(笑)。
この時代に『宇宙戦艦ヤマト』を描くということは、“ヤマト”ファンとヤマトを知らない若い世代の両方に向ける必要がありますよね。『復活編』のテーマについて聞かせてください。
『宇宙戦艦ヤマト』のテーマは“愛”。『復活編』の構想を思い付いたのは今から10年前になるけれど、脚本を書いているときに底辺にあったのも、もちろん愛だった。ただ、愛とは言っても様々な愛の形があって今回は地球への愛がテーマになっている。我々が今まで地球に対してどんな態度を取ってきたのか──公害、殺し、造り替え……。そして『復活編』では秒速29,000キロのスピード(光速1/10)で移動するブラックホールに地球が呑み込まれるという危機が描かれ、そこで人間は(呑み込まれる)直前に地球の大切さに気付くというストーリーになっているんだ。
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これまでのシリーズでも地球の危機は描かれてきましたが、環境問題が大きく取り上げられている現代だからこそよりリアルなメッセージになっていますね。

昔と今ではファッションや映像は変化しているけれど、本質的な“愛”はいつの時代も変わらないものだと信じている。広い宇宙空間のなかで地球を含む銀河系はちっぽけなもの。自分たちが住んでいる地球がなくなるという危機を通じて地球がいかに大切な存在かという、地球へのありがたみを感じてほしいと思ったんだ。それを『復活編』で伝えたいとね。
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古代進役は富山敬さんから山寺宏一さんに引き継がれました。監督から山寺さんに特別なリクエストはあったのでしょうか?

彼なら38歳の古代の声を演じられると思った。でも、天才的な声優である富山敬の声に似せながら自分の芝居をしなければならない、それはものすごく大変だったと思う。よくやってくれたよ。「俺たちは地球に対してどういう態度を取ってきたのか……」と古代が地球に向けて語る最後のモノローグのシーンはドラマのヘソになる重要なシーン。だから、その最後のシーンは声の調子がいいうちにと思い、最初のうちに録ったんだ。古代のモノローグを明確に演じてくれたこと、そのことに一番感謝しているよ。

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正義感が強くて優しくて男女問わず憧れるヒーロー、古代進。やはり監督にとっても彼は理想のヒーローですか?

難しい質問だね。そうあればいいとは思っているけれど、なにせ僕は今75歳だからね(笑)、今回の古代を見ていると38歳の頃の自分を思い出す。というのは、『宇宙戦艦ヤマト』の企画を思い付いたのがちょうど38歳の時でね。『復活編』の古代の年齢を38歳にしているのは、そんな理由からなんだ。
そうだったんですね! でも、38歳の雪は登場しませんね。行方不明という設定には何か理由があるんでしょうか?

雪は『復活編』の第2部に出てくる予定。宇宙のどこかにいて古代と娘の美雪が探しにいくというストーリーだけれど、実は『復活編』の脚本を書いている段階で38歳の雪というのがどうしても想像できなくてね。美雪という子どもがいる雪が想像つかなかった。だから一瞬で宇宙に消えていくようなシーンにしているんだ。
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ヤマト艦長を務める古代の周りには懐かしい顔から新しい顔まで魅力的なキャラクターが揃っています。なかでもゴルイ提督はデスラーに通じるものがあり、声を担当するのもかつてデスラーの声を演じていた伊武雅刀さん。長年のファンにはたまらないキャスティングですね。

そうなんだ。敵であっても古代と同じ良心を持った人物がいる、ゴルイはまさに昔でいうデスラーだね。だから伊武雅刀に「ゴルイ役をやってみないか?」と声をかけた。「ゴルイはデスラーに通じるものがある。是非やらせてほしい!」と快諾してくれてね。をゴルイ演じる彼を見て改めて優れた俳優だと実感したよ。彼の存在だけで画面がキュッと引き締まるからね。
ゴルイ提督役
伊武雅刀さんからのメッセージはこちら
※リンク先はオフィシャルチャンネルです。
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壮大なクラシック手法も健在でしたが、ショパンの多用は意外でした。

ショパン、ベートーベン、グリーグといったクラシック音楽を使っているけれど、正直ショパンとヤマトが合うかどうか疑問だった。でも、古いヤマトの映像にショパンを合わせてみたらぴったりでね。嬉しかったよ。後半はショパンのピアノ曲が随所に登場する。日本でショパンを弾かせたらナンバーワンの横山幸雄さんのピアノ演奏も素晴らしい。彼は『復活編』の功労者のひとりと言えるよ。
「さらば、地球よ……」あのテーマ曲をTHE ALFEEがカヴァーしているのも新鮮でした。

歌詞は同じでもTHE ALFEEが歌うことで、“新しいヤマト”であることが伝わっていると思う。彼らによって新しくなった劇中歌『宇宙戦艦ヤマト2009』は本当に素晴らしい曲に仕上がっていると思う。その曲と共に戦艦ヤマトが発進するシーンは特に思い入れのあるシーンになった。
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CGと3Dを合成させた映像はこの時代だからこそ描ける映像。そこにはどんな苦労があったのでしょうか?

映画を見てもらえれば分かると思うけれど、どこからがコンピュータグラフィックス(CG)でどこからがアニメーションなのか境目は分からないと思う。ここまでCGとアニメーションをうまく合成させた映画は他にないんじゃないかな。絵コンテから完成まで2年半。たしかに苦労は多かったけれどCGとアニメーションの合成は一番こだわった点と言えるね。
CGを駆使した迫力の映像、地球から惑星アマールへ移民するという壮大なストーリー、6連射が可能となった波動砲などすべてがパワーアップしている『復活編』だが、35年間色褪せずに存在し続ける最大の魅力は、監督いわく「愛をテーマにしている」こと。愛する人を守るため、愛する地球を守るために戦う宇宙戦艦ヤマトの雄姿に感動しない人はいない、そう断言できるほど『宇宙戦艦ヤマト
復活編』は愛に満ちている。
取材・文:新谷里映
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期間限定で「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」の壁紙をダウンロード購入できます。壁紙の募金金額はWWFを通じて、森林や河川・湖沼・湿地・湿原などの淡水系および海洋の自然を守るための活動、野生動物の保護、特に絶滅のおそれのある野生生物を守るための活動、地球温暖化防止や有害化学物質汚染防止のための活動に役立てられます。
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