解説:今はなき・・・みのり書房発行昭和52年6月1日号です。
表紙デザイン&レイアウト:真鍋太郎、藤井佳代子とあります。画像では小さくてわかりにくいかもしれませんが背表紙には自らスカートをまくる森雪を配するというマニアックぶりです。偏執的な愛を・・・感じずに入られません。
※表紙絵は一見、有名な泉口薫さん作画の本編使用セル画に見えますが表紙デザインスタッフがなぞった明らかな書き起こしです。
初回放映時に視聴率奮うことなく放映期間短縮の憂き目に遭って一旦は沈んだTVシリーズ宇宙戦艦ヤマト。その人気を浮上させる一助となった画期的な特集を組んだ雑誌です。ある意味書店に並んだ同人誌!誌面構成・文体とも魅力あふれるアウトローぶり!はっきりいって無茶苦茶です。(笑)後に社会現象になりブームに巻き込まれた青少年・少女数知れず。多くの青少年に人生を踏み誤らせた罪深い一冊でもあります。実験的な編集だらけですが紹介しましょう。
巻頭カラーはいきなり森雪のヌードとスケスケネグリジェが飾っています。有名な話ですがこのヌード画像とネグリジェ姿の元絵は本編映像に使用されたものではありません。本誌編集スタッフにより描き起こされたものです。
カラーグラフに紹介されているヤマト商品カタログは商品化されながら成功せず闇に消えた品々が多数紹介されていて興味深いです。このうち幾つかはリンクさせていただいている竹島未来さんのサイトに面白コメント満載で展示されています。
”写真構成:ヤマトのできるまで”コーナーは瞑目するドメル将軍(縁があってこのドメル将軍のセル原画と動原画一式はMAHの手元にあります)を題材にシノプシス〜フィルム作成までの流れがわかりやすく紹介されています。今となっては常識ですがブラウン管に映るアニメーションしか知らなかった当時のMAHには衝撃的な図解記事でした。ファンジン紹介コーナーには複写機と軽オフセット印刷が普及しだして制作された当時の草の根ファンクラブの手作り機関誌が8部紹介されています。
そしてモノクロで構成された誌面に移ると、そこにはうって変わった編集部の宇宙戦艦ヤマトへの熱い想いと記事が充満した素晴らしい特集が組まれています。
・ストーリーダイジェストは10ページにうまくまとめて紹介されています。
・人物紹介はまさしく脇役のみ!説明文にはやたら古代を攻撃する表現が目立ちます。MAHのアンチはある意味ここが出発点かも・・・。本編で反乱を企てた藪機関士の紹介にはさりげなく原案にあった真田技師長ご乱心(?)のお鉢が回ってきたことに触れています。またサブキャラ5人衆の南部が南部重工の御曹司という噂を流したのは本誌です。アフレコ時に伊部雅之(当時)の歌う主題歌が素晴らしかったとあります。
・ヤマト七不思議アナライザーのQ&Aは本誌の問題領域です。ここで回答されているいくつかの内容はジョークなのは明白でしたが、後年普遍的に裏設定として語られることになりました。(ガミラス人の皮膚が蒼いわけ・森雪以外の女性の行方等・・・)最後はアナライザーの電子頭脳(古い表現)が狂って幕引きとあいなります。
・ヤマト大事典は12ページを割いて50音順に各種設定を説明していますが今読み返すと大した内容ではありません。
・最後に・・・で西崎氏が続編(後の「さらば宇宙戦艦ヤマト」を作る意向を明らかにしています。
※文中紹介されている七色星団の決戦作画の参考にされた「空軍大戦略」は英国製空中戦争映画です。映画好きには著名な傑作ですがレビューを紹介しておきます。ユンカース爆撃機に七色星団決戦に登場する急降下爆撃機・雷撃機のアクションの由来がよく見えて興味深いです。
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邦題:「空軍大戦略」(原題:Battle
of Britain」) 132分
製作 : ハリー・サルツマン/S・ベンジャミン・フィッツ
監督:ガイ・ハミルトン
脚本:ジェームズ・ケナウェイ
撮影:フレデリック・A・ヤング
音楽:ロン・グッドウィン
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出演:
ハリー・アンドリュース/マイケル・ケイン/トレヴァー・ハワード/クルト・ユルゲンス/ケネス・モア/ローレンス・オリヴィエ/クリストファー・プラマー/マイケル・レッドグレーヴ/ラルフ・リチャードソン/ロバート・ショウ/スザンナ・ヨーク
内容:第2次世界大戦初期1940年の独逸による英国侵攻作戦の戦端を開いた空中決戦を描いています。英軍スピットファイヤ・ホーカーハリケーン、独軍メッサーシュミット・ユンカースシュツーカ・ハインケル爆撃機など戦時に使用され残存する実機を買い集めて(!)撮影に供されています。実機が画面を縦横無尽に暴れまわる凄さと物凄い量の火薬で実現した空爆シーンはこの映画の見所のひとつですが物語のシンプルさとスピード感あふれる展開戦闘で目を釘付けにする必見のクラシックムービー。史実にもかなり忠実で戦勝国/敗戦国を珍しく公平に描いていて鼻につくところがない傑作映画です。
最高峰映画であるにもかかわらず、未だDVD化されておらずMAHは手持ちのLDを個人的にDVD化して保存しています。
裏表紙は懐かしい板橋しゅうほうさんのペイルココーンです。
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巻頭まるまる1ページを割いて主張されていた無茶苦茶な編集方針を紹介しておきます。(笑)
『OUTを買う前の御注意』 「本誌はアホな企画を、熱い変態的ハートで編集しておりますので、むやみに表紙だけ見て買うのは危険です。内容を良く立ち読みしてお求めください。それでもなおかつお買い求めいただいた方は、次のような点に御注意願います。@次号予告をあまり信用しないこと。Aページの順及び、文字の配列が逆になっている場合があります。B投稿および編集部へのお便りは、厳しい嘲笑、および野次をもってベストとしておりますので、くれぐれもこちらに逆にアゲ足をとられないよう誤字、脱字に御注意下さい。アホで変態な読者諸氏、諸嬢の、実にバカバカしい企画を、チャンと切手の貼ってある郵政省御認可の紙でお送りください。(これだけはマジなのよ)以上のことをご了承の上、お買い上げいただくよう伏してお願い申し上げます。 敬具
編集部一同
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誌面目次
大特集 君は覚えいるか?「ヤマト」のあの熱き血潮を!!
素晴らしい誌面への意気込みを感じさせる当時のみのり書房編集部の迸るアツい想いを抜粋で紹介しておきます。 映像素材が手に入らず、書籍の類も乏しかった当時に宇宙戦艦ヤマトから得たものを彼らがいかにして世に伝えようとしたか汲み取ることができる素晴らしい文章です。
ボクたちがアニメといえば、まだマンガ映画といった方が通りがよかったころの作品、「鉄腕アトム」に始まり「鉄人28号」「8マン」等と続くナツマンを思い浮かべるだろう。
昨今のSF調アニメは、初回を見ていなければどれがどれだか区別がつかぬプロレス・アニメだという声もある。しかしその中にあって、ボクたちに夢とロマンをほうふつとさせ夢中にさせた作品があった。「宇宙戦艦ヤマト」である。
今回ここに、未だかつてない大特集を組んでお届けするのは、少年誌やTV誌で行われるありきたりの特集ではない。この作品がボクらの世代にいかに愛されたか、どれほどの夢を託されたかを、細かにふりかえってみたいのだ。もちろん、ヤマトを未だ知らぬ諸君にも十分その魅力が伝わるように。
口絵のカラーページは、ヤマトの画面をよみがえらせてくれただろうか。そして二色のページは、ヤマトを中心とした広がりを認識させえただろうか。
それならまずこれからあの有名なサブ・タイトルとラストの「あと何日」というテロップを追いながら、一話一話ヤマトの歩みをたどってみよう。これでストーリーをも思い起こすことができるはずだ。未見の諸君にもこの作品の骨組みはつかんでいただけるだろう。
そして次はヤマトの人名辞典。少年誌のようにヒーローを中心とする気はさらさらない。むしろこの冒険の陰でわずかに姿を見せつつ消えていった敵味方のキャラクターを追っていった。なぜなら彼らもまた、ヤマトのために、あるいはヤマトと戦い生き死にした命なのだから。そしてここまで呼び起こされた物語のプロットの中から、名セリフなどいくつか抜き出して、それぞれの見どころをはかってみたい。続いてこの作品のアラ捜し。愛するが故のイチャモンを、軽く読み流していこう。そして締めくくりはインデックスもかねた大事典、これであの「宇宙戦艦ヤマト」は、他に例を見ない形で浮き彫りにされるはずだ。
しかしこれは、テレビで26回にわたって放映された「宇宙戦艦ヤマト」でしかない。ヤマトの過去は?そしてあの作品に流れる、あるいは流そうと務めた製作者側の意図は何だったのか?それをヤマトのプロデューサーであるオフィス・アカデミー社長、西崎義展氏に特集の始めと終わりに語っていただき、興味本位の記事のままに終わらぬように完璧を期したい。
(後略) |
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