●民主党原口総務大臣はこれほどの愚劣報道を規制する必要があるんじゃないか
テレビの政治バラエティー、情報番組の民主党政権叩きは度を越している。自民党議員や民主に批判的な評論家、コメンテーターが、財務相交代劇や政治とカネ、マニフェスト問題などで民主党議員を攻め立てるシーンがやたらと目立つのだ。
たとえば、11日に放映された「たけしのTVタックル」。与党メンバーは民主、国民新、社民から4人。一方の野党は自民、公明、共産、みんなの党から5人が参加。ここにベテラン評論家や学者、コメンテーターらが加わり、議論を戦わせるのだが、扱うテーマは民主党政権の抱える問題が大半。
政治献金問題では自民議員が「総理も幹事長も庶民感覚とズレている」「政治資金規正法にのっとっていない」「守らない人間が悪い。説明してちゃんと捕まえなきゃダメ」とまで言い放つ。
さらに自民議員が「(民主は)若手が何も言わない」と言うと、番組は週刊誌の報道を大げさに紹介。これに野党議員が「独裁的体質だ」とたたみこむ。
4月廃止が実現できなかった暫定税率問題などマニフェストを巡っては、評論家が「うそをついて申し訳ないと謝ればいい」と口火を切ると、野党議員は「うそつき」と何度も口汚くののしる。
10日の「サンデープロジェクト」では、小沢幹事長と距離を置く長老の渡部恒三議員を中継で引っ張り出し、藤井前財務相交代劇の裏に小沢との確執があったということを、必要以上に強調していた。
10日の「みのもんたVS.国会議員ずばッとコロシアム」という特番でも、自民、公明の議員たちは、小沢批判のみのもんたに媚を売るように民主党の政策批判に終始していた。
ここに挙げたのは氷山の一角。毎日毎日、あらゆる情報番組で政治が取り上げられているが、大半は鳩山政権の動きを面白おかしく流し、コメンテーターらが深刻そうに解説を加えるだけである。
「政治のエンターテインメント化がどんどん進んできた。ニュース番組のワイドショー化をインフォテインメントと表現するようになってきています。制作側の狙いは、何が真実かではなく、いかに面白く見せるか。だから政治家同士にガンガンやらせたりしているのです」(明大教授・井田正道氏=計量政治学)
そこには視聴率稼ぎという意図が丸見えだが、最近のTVの民主党批判は、真相を伝えるというメディアの役割を放棄しているとしか思えない。法大教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「小沢幹事長のカネの問題では、明らかに検察のリークとしか思えない情報を前提に、大問題かのように騒いでいます。その情報は事実なのか。本来は事実に基づいて論評しなければならないのに、今の報道姿勢はおかしい。藤井前財務相の問題だって、本人が健康問題だと言っているのに、あれやこれや詮索しているが、事実関係を押さえているのか。最近の報道は疑問だらけですね」
さらに言えば、民主党叩き報道の裏側には、放送免許の許認可を握る自民党政権にベッタリだったTV局、そこにCMを流すことで影響力を維持してきた大企業など旧勢力の一致した思惑があるとしか思えない。
「民主党は通信・放送行政を総務省から切り離し、独立行政委員会(通信・放送委員会)を設置する意向を持っています。また、同一事業者が新聞やTVなど複数のメディアを所有するクロスメディア所有の是非も含めた改革案を考えている。これは許認可を通じてTV局ににらみを利かせてきた自民党や、既得権益を失うかもしれない大マスコミには脅威です。スポンサーという立場で批判的な報道を抑えてきた大企業もこれまでのようにはいかなくなる。そこで自民党の悪政には目をつぶり、自民党政権時代から民主党つぶしに血眼になっている。そんな見方が出るのも当然ですね」(メディア関係者)
原口総務大臣は、いつまで民放のやりたい放題を許しておくのか。愚劣な報道に対応するためにも独立放送委員会の設置を急ぐべきだ。
(日刊ゲンダイ2010年1月13日掲載)