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石川議員逮捕―小沢氏に進退を問う

 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体の土地購入疑惑をめぐり、石川知裕衆院議員が東京地検特捜部に政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。ほかの元秘書も逮捕された。

 国会開会中に国会議員を逮捕するには、許諾請求の手続きが必要だ。捜査当局とすれば、週明けの通常国会開会の前に石川議員の逮捕に踏み切ったということだろう。

 民主党政権の真価が問われる初めての通常国会を直前に控え、政権一の実力者である小沢氏の側近だった現職の国会議員らが逮捕された。まさに異常事態である。

 きょう開かれる民主党大会は、夏の参院選に向けて結束を示すはずだったのに、それどころではなくなった。

 小沢氏をめぐっては、西松建設の違法献金事件で、公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で逮捕・起訴され、東京地裁で公判中だ。秘書は無罪を訴えている。今回の土地取引疑惑でも、小沢氏は「意図的に法律に反する行為はしていない」と語り、検察の任意の事情聴取要請にも応じていない。

 しかし、側近から3人もの逮捕者を出した政治的、道義的責任は極めて重いと言わざるをえない。

 小沢氏の資金管理団体は、5年前に東京都内の宅地を購入した。購入資金に充てた約4億円を「収入」として収支報告書に記載しなかったことなどが、石川議員の逮捕容疑だ。

 疑惑の核心は、4億円の原資がどこから出てきたかだ。その一部が、同じ時期に岩手県内のダム工事を下請け受注した中堅ゼネコンから、石川議員に渡された5千万円ではないかとのヤミ献金疑惑が浮かんでいる。

 小沢氏はこれまで、捜査中であることを理由に、この4億円の出どころや不自然な経理操作の理由などについて、一切説明をしていない。

 しかし、もはや説明を拒み続けることは許されまい。検察の事情聴取に応じ、国民に対しても納得のいく説明をすべきだ。それができないのであれば、「やましい金だった」と思われても仕方ない。

 民主党では、鳩山由紀夫首相の元公設第1秘書も違法献金事件で起訴され、公判を待つ身だ。

 通常国会は冒頭から、野党の厳しい追及が予想され、混乱は必至だ。小沢氏に対し、説明責任を果たすよう求める動きがほとんどなかった民主党内でも、ようやく小沢氏の責任論が言われだした。

 このままでは、政権交代をしたのにカネまみれの政治の姿は何も変わらないと、国民の失望は深まる。

 刑事責任の有無とは別に、小沢氏が負うべき政治責任はそこにあるのではないか。小沢氏は自らの出処進退を決断すべきだ。

給油支援終了―徹底検証し、教訓生かせ

 8年間に及んだ海上自衛隊によるインド洋での給油支援活動が終わった。

 北沢俊美防衛相がきのう撤収命令を出し、3週間ほどで部隊は帰国する。

 インド洋派遣は2001年の9・11同時テロ後、米国が「自衛戦争」として始めたアフガニスタン攻撃の支援策として、その年の12月から始まった。

 テロリストや武器・麻薬の流出入を阻止するため、インド洋北部で活動する米、英、パキスタンなど12カ国の艦艇に燃料を無償提供し、その総額は約250億円にのぼった。

 戦闘地域そのものではないにせよ、戦地に近接したところに自衛隊を派遣する初のケースだった。当時の小泉政権は、根拠となるテロ対策特措法に「非戦闘地域」という概念を導入し、そこでの後方支援なら憲法に反しないという際どい解釈を組み立てた。この法解釈は、その後のイラクへの自衛隊派遣にも援用された。

 テロとの戦いに、米国の同盟国としてどう役割を果たすか。日本が選択した給油支援は、国際協力として確かに、それなりの評価を得た。日本の存在感を示す上でも、支援の再開を求める議論が自民党などにある。

 だが補給の需要は開始から2年ほどで急減していた。しかも、現実にはアフガン情勢の悪化は止まっていない。

 鳩山政権は、補給支援に代えてアフガニスタンへの民生支援として5年で50億ドルの拠出を決めた。妥当な選択ではなかろうか。

 自衛隊の運用をめぐる様々な問題も露呈した。

 07年には、補給した燃料がイラク攻撃に参加する米軍艦艇に転用されていたのではないかという疑惑が浮上した。国会への報告で給油量を間違えたり、それを隠蔽(いんぺい)したりした問題まで発覚し、文民統制がないがしろにされているとして批判された。

 いま鳩山政権に求めたいのは、8年間の活動に対する外交上、あるいは憲法と自衛隊の運用をめぐる問題など様々な側面からの総合的な政策評価だ。

 イラク戦争をめぐっては近年、参戦した英国をはじめいくつかの国々で、その是非を検証する動きがある。

 イラク攻撃に支持を表明し、自衛隊をイラクに派遣した小泉政権の判断は正しかったのか。妥当性はあったのか。その検証も必要だ。

 「テロとの戦い」にせよ、イラク戦争にせよ、日本の協力についてのそうした検証作業が大事なのは将来に教訓を生かす必要があるからだ。

 国連の平和維持活動(PKO)や海外の大規模災害に自衛隊を派遣するケースはこれから増えるだろう。どのような活動が紛争の抑止や平和の構築に役立つのか。経験を踏まえて考える。アフガンへの民生支援の肉付けを急ぎつつ、検証作業を進めたい。

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