ニュースGoogleの撤退騒動、中国ネットユーザーの反応は?Googleが検閲問題を理由に中国からの撤退を示唆したことについて、同国のネット活動家は称賛の声を上げている。だが、中国政府の譲歩を予想する人は少ない。(ロイター)2010年01月14日 15時05分 更新
米Googleが検閲やハッキング行為を理由に中国市場から撤退する可能性を示唆したのを受けて、1月13日、中国の反体制派やインターネット活動家からは称賛や警戒の声、花束が数多く寄せられた。今後の展開については、「用心深い中国政府が譲歩する可能性は低い」との見方が大方のようだ。 世界最大手の検索エンジンであるGoogleは、中国で同社のGmailサービスを使って中国反体制派にサイバー攻撃が仕掛けられたのを受けて、同社の中国語サイトgoogle.cnを閉鎖する可能性を明らかにした。 このニュースを受けて、北京の学生街にあるGoogle中国法人のオフィスの正面玄関では、Googleの看板の下に赤いバラと白いユリの花束をたむける北京市民の姿もみられ、中には、北京語で辛らつなスラングを叫びながら、Googleを称賛する人もいた。 「われわれは憤りの気持ちを表明したいのだ。Googleに対する憤りではない。ここへ来るということはある種、Googleへの支持の表明だ」とIT企業に勤務するチャオ・カンさん(30)は語っている。 「Googleは中国において非常に厳しい敵対的な状況に直面している。われわれがこれまで心の内で感じていたことが、これで明るみに出た。わたしは中国のインターネットにとって今年が重大な分岐点になると確信している」とさらにカンさんは続けた。 中国の活動家はかねてより、中国共産党がインターネット統制を強化し、公衆安全と社会道徳の名の下に情報や思想の広まりを鎮圧していることに不満を表明している。 ここへきて、そうした不満が世界最大手のインターネット企業や米政府からも指摘されたというわけだ。米国のヒラリー・クリントン国務長官も、中国政府はサイバー攻撃について説明すべきだと発言している。 こうして中国政府に対する批判が高まるなか、経済摩擦や台湾への武器売却、チベット問題に加えて、インターネット統制が米国政府と中国政府間のさらなる摩擦の原因となるのは必至だ。 「驚くべきはハッキングや検閲行為ではない。そうした行為はこの国では日常茶飯事だ」と北京在住のライター兼ブロガーのリュウ・ニンさんは語る。「驚くべきは、これほど大きな企業がこうした問題に対する沈黙を破ったことだ。これまでは企業は沈黙を貫いていた」 もっともGoogleの方針を歓迎した中国反体制派の間ですら、中国政府が新たな圧力に屈する可能性はほとんどないとの考えが大勢だ。同政府は、国禁の思想やニュース、とりわけ一党独裁に対する反発の声に同国の3億6000万のインターネットユーザーをさらすことを恐れているのだ。 「インターネットでわれわれが意見を表明できるスペースは狭められつつある。政府による統制がますます詳細かつ広範囲にわたるようになっているからだ。今後、緩和の方向に進むとは思えない」と中国社会科学院の著名な学者であり、人権の拡大を求めて運動しているシュウ・ヨウユウ氏は語る。 Googleはハッカー攻撃の背後に中国政府の存在があるかどうかについては見解を明らかにしていない。 中国外交部は同国政府がハッキングを支援しているとの指摘を繰り返し否定している。海外の専門家によると、一部の攻撃には「かなり高度な組織的攻撃」の痕跡が認められるという。 また中国の人権活動家の中には、Gmailも含め、自分のメールアカウントがしばしばフィッシング攻撃のターゲットにされていると報告している人たちもいる。フィッシング攻撃とは、ユーザーの個人情報にアクセスするためにメールを使ってユーザーを偽サイトに誘導するという攻撃手法だ。 「中国政府は各種のツールを使って反体制派を標的に据え、そうした人たちの個人的な思想や行動に口を差し挟もうとしている」とアーティストで、人権問題などさまざまな社会的な問題についてインターネットでも活動を続けているアイ・ウェイウェイ氏は指摘する。「大半の反体制派はセキュリティについてそれほど慎重ではない」と同氏。 「もしGoogleがgoogle.cnを閉鎖すれば、中国政府は海外のGoogle検索エンジンへのアクセスに対する取り締まりを強化することになるだろう」とインターネット検閲に対する反対運動を行なっている実業家のワン・ジュンシウ氏は指摘する。海外のGoogleエンジンは中国語の検索もサポートできる。 ただし中国の多くの一般市民は自国のBaidu(百度)検索エンジンを使ってインターネットを閲覧しており、インターネット企業やユーザーの多くは中国政府の検閲をめぐる今回の騒動に加わることはなさそうだ。 「今回のニュースを職場の同僚に伝えたが、誰も気に留めてくれなかった。中国で大きな利益を上げられるはずなのにGoogleは愚かだ、というのが皆の考えのようだ」と北京のGoogleオフィスでの小規模な抗議に参加したという研究者のマー・ジエさん(28)は語っている。 関連記事
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