|
|
きょうの社説 2010年1月16日
◎石川衆院議員逮捕 「小沢資金」の徹底解明を
小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体による土地購入疑惑で、東京地検特捜部が元秘書
だった石川知裕衆院議員らの逮捕に踏み切ったのは、小沢氏が検察の参考人聴取に応じないなかで、石川議員をこれ以上、任意で調べても疑惑の核心に迫られないと判断したのだろう。18日から通常国会が始まれば憲法で保障された国会議員の不逮捕特権により身柄確保が困難になるため、時間も限られていた。真相解明のためには、このタイミングでの逮捕もやむを得ない。西松建設の巨額献金事件で秘書が逮捕、起訴されたのに続き、元秘書2人も逮捕された ことは前代未聞であり、小沢氏の政治責任は重大である。小沢氏は今度こそ説明責任を果たしてほしい。 石川議員は04年10月29日、「陸山会」名義で東京都世田谷の土地を約3億4千万 円で購入したのに、04年の政治資金収支報告書に記載しなかった疑いが持たれている。 小沢氏側は「定期預金を担保にした融資金4億円を当てた」と説明しているが、実際に は融資を受ける直前に支払いが済んでいたことが判明している。検察はすでにゼネコン大手、鹿島本社などを家宅捜索しており、資金がゼネコンから流れたことを疑っている。 石川議員は昨年末からの再三の事情聴取で不記載の事実は認めながらも、「手持ち資金 が足りず、小沢先生から借り入れた4億円で購入した」と繰り返してきた。検察が逮捕に踏み切った背景には、供述を変えようとしない姿勢があったとみられる。 小沢氏は定例会見でも不透明な会計処理についての質問にまともに答えようとせず、開 き直りとも受け取れる姿勢に終始した。政権政党の幹事長とはとても思えない不誠実な態度である。 検察が一連の強制捜査に踏み切った後も、鳩山由紀夫首相は小沢氏が聴取に応じない点 について「本人が判断されること」と人ごとのように述べ、幹事長を続投させる考えも示していた。党代表としてはあまりにも頼りなく、今回の逮捕とそれに続く事件の進展は、首相の政権運営を大きく揺さぶることになろう。
◎北陸のドカ雪 「落とし穴」ふさぐ機会に
峠を越えた北陸のドカ雪は、近年の少雪傾向で確かめられなかった官民の除雪協力体制
や万一の仕組みを見直す貴重な機会になったのではないか。自治体のなかには財政悪化で除雪車出動の目安となる積雪量の数値引き上げを検討したり、建設業者の減少で民間の除雪機械確保を危ぶむ声も出ていた。不況が雪害対策にも影を落とすなか、そうした状況変化の影響を見極め、安定した対策を講じる必要がある。雪害対策で落とし穴があるとすれば、暖冬慣れによる行政や住民の油断である。昨年1 2月からのまとまった雪で、自治体では除雪費用が底をつき、補正予算や予備費充当などの財政措置を迫られている。税収減が深刻化し、除雪費はできるだけ抑えたいのが本音だろうが、見通しが甘ければ、いざというときに対応が後手に回りかねない。今回のドカ雪で検証するテーマはいくつもあるはずだ。 昨冬は能登南部を襲ったゲリラ豪雪により、七尾市などで道路除雪が遅れ、交通がまひ した。今冬は国、県、市の連絡体制が機能し、混乱は避けられた。一方、スリップ事故が多発し、除雪作業中の負傷事故も相次ぎ、雪害の怖さをみせつけた。 金沢市内では学生による「雪かきボランティア」が市の仲介で協定を結んだ町会などに 繰り出した。昨冬はほとんど出番がなかったが、高齢者の多い地域などで若い力が頼りになることが証明された。協定グループをさらに増やし、「学都」にふさわしい安全網を構築したい。こうした仕組みは、地震やゲリラ豪雨など他の災害でも役に立つはずである。 建設業者のなかには経営体力が低下し、自治体との除雪委託契約を解除する動きもある 。官民の協力体制の再構築は今後の大きな課題である。行政の手が回りにくい生活道路や歩道は地域で率先して除雪を担うのが望ましいだろう。 除雪の在り方をめぐり、行政と住民の間でしばしば認識に食い違いもみられるが、身勝 手な要求は円滑な作業を妨げる恐れもある。大雪は「公の精神」を見つめ直す機会にもなる。
|