【社会】子どもの「性」売り物に 名古屋の夫婦、遅すぎた謝罪と後悔2010年1月15日 15時41分 「子を守るべき立場なのに、生活苦からお金の誘惑に負けた」。実娘(7つ)の下着姿の画像を入れた記録媒体をネットオークションで販売したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反罪に問われた名古屋市の建設作業員(33)と妻(28)。14日、名古屋地裁の公判で声を震わせた。幼いまな娘の「性」を売り物にした愚かさと、危険性への無知。施設で両親の帰りを待つ娘に遅すぎた謝罪はどう響くのだろうか。 検察の冒頭陳述などによると夫婦は約8年前に結婚。だが、不況で夫の収入は昨年春には手取りが3分の1以下に激減し、住宅ローンが家計にのしかかった。妻は病気を抱えて外に働きに出ず、自分の下着をネットで売っていたが、子どもの下着が高値で取引されていると知り、娘の下着を販売し始める。 購入客から娘の写真を求められ、夫婦は携帯電話で撮影した画像をカードに記録し、ネットで群がった約80人に販売した。昨年4〜9月に、140万円余を売り上げた。 客に娘と話をさせる“権利”を売ったり、娘にカツラをかぶせて架空の姉に仕立て、稼ぎを増やしたりも。 「娘には申し訳ないという気持ちだったが、生活しなければならなかった。でも後悔ばかり」と夫はうつむいた。 妻は「当時は違法とは思わず、児童ポルノという言葉さえ知らなかった。売った写真が悪用される可能性も考えなかった。浅はかでした」。法廷で、涙が止まらなくなった。 愛知県警によると、ネットへの画像流出は幸い確認されていない。だが、いったんネット上に広まると回収が難しく、児童ポルノの被害者は傷を背負い、過酷な人生を強いられかねない。 娘は施設に保護され、捜査関係者に「ママやパパに知らないおじさんと電話で話をするよう言われた」などと話しているという。 夫は新たな仕事を始める決意を語り「勝手かもしれないが、親として娘が幸せになるよう育てたい」と、一家の再出発を誓った。検察は夫婦に懲役1年2月、罰金20万円を求刑し結審。判決は今月下旬に言い渡される。 ◆昨年、全国で10数人摘発 児童ポルノ事件で、保護者がわが子の裸の画像を販売するなどした“親の犯罪”が昨年は続発し、警察庁によると、全国で少なくとも10数人の母親や父親らが摘発された。 宮城県警は、出会い系サイトで知り合った男らに、画像入りの記録媒体を提供するなどした母親ら10人前後を相次いで摘発した。 警察庁の担当者は「わが子を食い物にする保護者に、直接働き掛けるような対策は難しい。まずは児童ポルノの製造や販売は許さないという意識を社会で広めたい」と話す。 同庁によると、こうした事件を含め児童ポルノ絡みの事件は、統計のまとまっている昨年上半期(1〜6月)でみると、被害児童が前年同期比で51%増の218人に上った。 政府は昨年12月、犯罪対策閣僚会議の下に、児童ポルノ排除に取り組むワーキングチームの設置を決めた。 (中日新聞社会部・今村実)
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