▽第3試合1回戦(午後3時38分開始)
安房(千葉)
000000002=2
000000000=0
城北(熊本)
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安房は九回2死から鈴木が内野安打。4番・鹿嶋の右越え三塁打で1点を挙げ均衡を破ると、続く佐藤の左前打で2点目。佐野は9安打を許しながら、要所を締めて完封勝利。城北は四回以降、毎回走者を出したが適時打なく、村方の好投に報いられなかった。
序盤は球にバットが当たらず、終盤勝負だと思った。佐野はボールを低めに集め、高さの失敗がなかった。
好機で1本が出なかった。大振りで打ち上げてしまっては点が入らない。村方はよく投げた。九回の3連打は、相手が上だった。
最後に笑ったのは、粘りの投球を見せた安房の佐野だった。城北の村方が序盤から、得意のスライダーで三振の山を築いた。佐野は直球は120キロに満たないものの低めを丁寧に突いて対抗。9安打を浴びながら要所を締め、完封。「投手としては相手の方が上。あんな投球をしたいけど、自分にはスピードもないし、あれしかない」と佐野。お立ち台では「必死に助けてくれた仲間のおかげ」と、無失策で守り切ったバックに感謝した。
■この一瞬
その球を、待っていた。九回2死走者なしで安房の3番・鈴木。6球目、外角へのスライダーを強打すると、打球は遊撃・鶴のグラブをはじいて左前に転がった。「あのスライダーは1打席目に三振したのと同じコース。ただ、村方君の唯一の弱点にも見えた」
村方に八回まで3安打に封じ込まれた。「特に変化球が見たことのないレベルで、打てる気がしなかった」(4番・鹿嶋)。しかし、打席に立つ度に鈴木は気付く。「追い込んでから外角へ投げる球がわずかに甘い。回を追うごとにその傾向が高くなる」。ベンチでチームメートに問うと、皆同じ意見だった。
「コンパクトに打てばヒットになる」と、意思統一したのが九回だった。鈴木に続く鹿嶋の右越え適時三塁打も、5番・佐藤の左前適時打も、すべて外角球。村方は、ぼうぜんとマウンドに立ち尽くした。
勝利へのわずかな糸口を見逃さなかった安房。「甲子園でこんな試合をできるお前らはすごいな」。早川監督は九回の攻撃中、ベンチで思わず声を出してしまったという。そしてこう付け加えた。「初出場初勝利の歴史を作ったこの子たちなら頂点だって夢じゃない」。21世紀枠からまた新たな可能性が生まれた。【倉岡一樹】
「チャンスはあったのに」。城北の4番・山崎は悔やんだ。9安打を放ちながら好機をとらえられず、完封負け。惜しまれるのが、八回2死二塁の場面。山崎の右方向への打球は一、二塁間を破るかと思われたが、一塁手に体で止められ内野安打となり、二塁走者は生還できず。「なんとか一本と思ったが」。適時打を阻まれた4番は、唇をかんだ。
■春きらめく
「飛ばし過ぎたか」。序盤のパーフェクト投球を少し悔やんだ。柔らかなフォームから繰り出すスライダーが切れた。三回を終わって6奪三振。一人の走者も出さず、安房打線を圧倒した。
好調な出足に、安房の大応援団に対してさえ、「やりやすい」と感じていた。走者2人を出した五回は、2三振で切り抜けた。しかし、終盤、「流れが相手にいくようだった」と感じたのは、スタミナ切れだったか。
九回、簡単に2死を取ったが、違和感があった。「自分の間合いで投げられていない」。内野安打の後、4番・鹿嶋への4球目は、高めに浮いたところを右翼後方に持っていかれて三塁打。続く佐藤にも左前に運ばれ、決定的な2点を失った。
「スライダーが通用することが分かった。それに、スタミナが足りないことも」。勝つための材料は、見つけて帰った。【藤倉聡子】
毎日新聞 2008年3月23日 大阪朝刊