2010.1.15 05:00
「抗鬱(うつ)剤は鬱病患者の70%に効果を示さない」。今月5日発行の「米国医師会報(JAMA)」でこんな研究結果が報告された。
調査を行ったのは米ペンシルベニア大学のジェイ・フォーニエ氏が率いる研究グループ。国立精神衛生研究所の資金提供を受け、700人の鬱病患者から得られた過去6回の臨床試験データを調査した。英グラクソ・スミス・クラインのパキシルとセロクサットの主成分「パロキセチン」と、ジェネリックの「イミプラミン」が対象となっている。
調査の結果、抗鬱剤は「極度な重症患者」には多大な効果を示すが、軽度、中度、重度症状の患者に対しては、その効果が「皆無から微小」であることが判明したという。
フォーニエ氏によると、この6回の臨床試験のうちほとんどは、軽症患者を試験対象から除外しているうえに、2002年の調査によれば、鬱病患者の70%は薬剤の恩恵を受けられない程度の軽症ということが判明している。
研究員らは「抗鬱剤が軽度の鬱病患者に対しても有効だという証拠がない」としたうえで、その事実が「薬剤の営業活動時に提示されていない」と指摘した。さらに「医師、治療方針決定者および患者はその事実を認識すべきだ」と述べた。