■ただいま。北京の友人宅に居候中です。自由の身になって、さっそくふらふら北京にきてしまいました。友人を訪ね歩きお年賀を渡したりしています。今回うかがえなくても、また2月にくるんで、そのときも年賀あるきしていると思います。待っててね。
■さて阪神大震災15年目のメモリアルを前に、ハイチ大地震が起き、多くの方が苦しんでいらしゃる状況に一番関心をよせるべき時なのでしょうが、さきにグーグル撤退について、ちょこっただけ、リポートします。
■いまさら書くのもあれですが、グーグルが中国から撤退(するかも)宣言をしました。1月3日夕の突然のネット検閲解除や、11日の百度に対する「イランのサイバーアーミー」によるハッカー攻撃など、年明け早々、中国インターネットはなにやら、不穏な空気が流れているなあ、と思っていたやさきの事件であります。
■中国グーグル本社の門の前には薔薇の花がささげられたり、お酒やろうそくがささげられたり、さよならグーグルといった手紙が置かれたり、なんかお通夜ムード?(というより、中国人独特の風刺諧謔というべきか)
■報道によるとグーグルで天安門事件の写真がみることができる、とありますが、私はさきほど試してやはり何度やってもブロックされました。グーグル本社が発表した撤退理由のページのアクセスまでブロックされているよ(笑)。でもツイッター meyouにキャッシュからはいってアクセスすると(普段は見られないのに)なぜか見れたり、またブロックされたり、ネット検閲状況がなんか混乱しております。さっき、グーグルのサーチでグーグルといれたら、なんかブロックされたけど、たんに無線の調子がわるいだけ?
■さて、グーグルが撤退したい理由というのは、私も愛用しているgmailが、サイバー攻撃をうけたことだというふうに発表されています。gmailは、人権活動家や民主活動家が愛用しているフリーメールで、重要な文書の受け渡しとか捨てメールとして使われたりします。私がチベット族の友達と文通したりするのも、gmailです。何度も使うとマークされるので、数回使うと捨ててしまいます。
■彼らのアカウントにたいして、中国を発生源とする「高度に洗練され、グーグルの企業インフラをターゲットにした攻撃」がグーグル本社が昨年12月中ごろに探知したそうです。調査の結果、この攻撃の主要な目的が、中国の人権活動家のGmailアカウントを攻撃することにあったことが判明。さらにこの攻撃とは別に、米国、中国、欧州の中国人権活動支援者のGmailユーザーのアカウントが、フィッシングやマルウェアなどの手法により定期的にアクセスされていた、そうな。
■これまで中国当局に屈したと批判されながらも、中国市場進出のために必死に検閲に協力し、頑張ってばくだいな金を投じても百度の一人勝ちに太刀打ちできないグーグルとしては、ここまで中国にコケにされればブチ切れるのも当然、かもしれません。「もう中国の検閲に加担するのはやだい!」とはっきりいってくれました。
■ちなみに、きょう昼にとあるブックカフェにいくと、人権派作家の王力雄氏ら08憲章メンバーがなんか熱心にグーグル問題について議論していました。声明とか発表する相談かな?グーグル撤退が、中国における人権活動や言論の自由にいかなる影響があるか、まだわかりませんが、皆様に興味がおありなら、ちょっと調べておきましょう。
■さて、14日の新京報でグーグル撤退をどう報じているか。自分で文章を考えるのはしんどいので、きょうは新京報の報道内容を紹介しておくだけにします。
■(引用)毎年2億ドルの収益をほこるグーグル中国がおそらく閉じられる。グーグルオフィシャルブログによれば、「われわれは今後も中国の検閲を受け続けたくない。…中国側との協議が(検閲に加担しないという)合意に達しない場合、グーグル中国は閉じ、グーグル中国事務所も閉鎖せねばなるまい」という。
■(引用)首席法律顧問Drummond氏はブログで「この決定は米国本社によるもので、グーグル中国の在中国メンバーはこの決定には参与していない。…このさきいかなる難題が発生しても解決するよう責任はとります(社員や関連広告会社に対する補償はなんとかする)」としている。
■(引用)13日昼ごろから、ネットユーザーたちが続々と中関村のグーグル中国本社前で献花し、お通夜(儀式)のまねごとを行った。ガードマンは警備を強化し社員以外が本社建物の中に入らないよう徹底している。
■(引用)午後6時になると、ろうそくがともされ、グーグルの社名碑の上は紹興酒や鮮花でいっぱいになった。…グーグル中国が過去四年で得た売上は全世界のグーグル売上のわずか1~2パーセントだった。(中国市場の貢献度はひくかったのね)
■(引用)グーグルの中国撤退決定後、グーグル中国社員の間に動揺が走っている。「グーグルの価値観とは全世界に先進的ネット技術を提供することだろう?まさか中国ユーザーを見捨てるのか?まさかわれわれ中国人社員を見捨てるのか?」
■(引用)百度、捜狗、騰訊、網易など中国の同業者たちは昨日、一様にこのニュースに対する論評をひかえた。しかし、内部では緊急会議をひらき、グーグル撤退後の市場争奪に備えた戦略を練っている。2009年グーグルの国内市場シェアは35.6%、百度には後れをとるものの、捜狗、捜捜などに比べればそのサーチ数は数十倍。
■(引用)ネット評論家の洪波氏は言う。「グーグルが中国市場に形成した産業リンクは巨大で、撤退すれば、失われるビジネスは非常に多く、とくにグーグル中国の広告代理店への影響は大きい」「国内で多くの人がグーグルを使って海外での貿易セールスを行っており、アリババなど大口顧客が影響をうけるだろう」
13日のグーグルの株価は1・77%下落。
■(論評引用)
(グーグルがいかにネットを革新させたか説明がつづき)…グーグルが中国に進出して以来、中文ネットもポジティブな影響をうけてきた。百度がもっとも大きな受益者だ。米国投資者のグーグルに対する迷信があったからこそ、サーチエンジン市場の70パーセントをしめる百度がナスダックに上場したとき、株価が猛烈にあがり、400ドルの高値を維持している。…中国ネット業界の業態多様化がすすめられた。
もしグーグルが撤退すれば、グーグルにとっても、中国ネット業界にとっても二重の損失だ。グーグルにしてみれば中国市場は年商2億ドル、全世界市場の1%にあたる利益を得られるだけでなく、中国市場はさらに潜在力を秘めている市場なのだ。…中国ネット業界にすれば、グーグルは重要な産業の模範を示し群狼効果を与えた。グーグルの存在によって中国ネット企業は常に前進せねばならないプレッシャーを受けてきた…。
グーグルはまだ撤退するという最終決定を行っていない。…すべてIT関係者、業界監督者が最も注目する問題である。(以上、引用おわり)
■昨年から、中国はグリーンダム事件(国内で新規発売されるすべてのパソコンネットに検閲ソフト・グリーンダムの搭載を義務付けるお触れを出して、猛烈に反対をうけたのと技術不足で、そのお触れを撤回した事件)やらあり、ネット検閲の強化が図らる方向性が打ち出されていました。これは、中国ネット検閲を強化するだけでなく、でかい中国市場を中国企業が独占し、外資企業を追い出す作戦かと思いましたが、強く洗練された外資企業が入ってくることによって、中国企業も洗練されていくという効果はやはり、中国人も分かっているみたいですね。
■新京報の論調では、やはりグーグル撤退は中国にとってもマイナスと観ているようです。さすがに、人権活動家のメールアカウントへの攻撃があった、みたなところまではかいてませんが。
グーグル側も中国政府という名指し批判はしてないので、ひょっとすると、和解の余地があるかもしれません。私の周りの人は「グーグルのメルアドとかつかえなくなるのかなあ」と不安がっています。正直、私も中国でグーグルが使えないとすごく不便。
でもそれでもグーグル、よくぞ言った、という気持ちの方が強いかな。これを機会に、中国が検閲をゆるめるとか、そういう甘い期待をする余地がまったくないのが、本当に残念です。
by 福島香織
北京はグーグル撤退で、お通夜…