|
きょうの社説 2010年1月15日
◎医療と商工の連携 北陸は成果を出せる環境
医療という新たな成長分野で石川、富山県の研究者や関連企業などが連携して研究、開
発を進める取り組みが相次いでいる。医療機関や医薬品企業が集積する両県は医療と商工の連携、いわゆる医商工連携の成果を生みやすい環境にあるといえ、その能力をフルに発揮して新しい成長の芽を育ててもらいたい。金大理工研究域の教授と高岡市の厚生連高岡病院整形外科の医師らのグループは、歩行 障害の「間欠性跛行(はこう)」の共同研究を行っている。臨床医学と発光ダイオードマーカーなどを活用してデータ解析を行う工学の力を合わせて、効果的な診断・治療法の確立と患者の痛みを和らげる装具の開発を進める狙いである。 また、北陸先端科技大学院大の研究者らと富山市のバイオベンチャー企業は、病気診断 を速く正確にできる遺伝子検査用バイオチップと装置の開発に乗り出し、2011年までの実用化を目指しているという。どちらも医療の高度化と産業化に結びつく取り組みであり、成果が待たれる。 新たな成長戦略を探る経済産業省は昨年、医学界と産業界の代表らで「医療産業研究会 」を発足させた。雇用の創出、技術革新、地域振興の観点から医療サービスを有力な成長分野に位置づけ、医療の質の向上と新たな産業化の方策をまとめる予定である。 具体的なテーマとして、医療と周辺産業の連携による健康関連サービスの市場開拓、先 進的な創薬、医療機器の開発、医療ツーリズムなどが挙げられている。そうした取り組みで石川、富山は先行的な役割を果たせるはずだ。石川県は08年度に創設した「産業化資源活用推進ファンド」で、医療・保健分野と商工業の連携を資金面で後押しする仕組みも設けており、積極的に活用してもらいたい。 政府の事業仕分けで廃止の恐れもあった石川、富山県共同の「ほくりく健康創造クラス ター」事業が、他の事業と統合する形で継続されることになったのも幸いである。同事業の鍵の一つは医商工連携がうまくいくかどうかであり、これから事業継続の意義と成果が問われることになる。
◎海自の給油終了 日本の貢献世界に示せた
海上自衛隊がインド洋で展開している外国艦艇への給油活動がきょう、新テロ対策特別
措置法の期限切れに伴って終了する。8年に及ぶ支援活動で、国際社会に日本の存在を目に見える形でアピールできた。経費が比較的安く、低リスクという利点もあり、優れた国際貢献策だったといえる。「テロとの戦い」の道半ばで、やめてしまうのは惜しい。インド洋での海自の活動は、日本の生命線であるシーレーンを守るという意味でも大き かった。洋上での長期にわたる過酷な任務に耐え、938回に及ぶ給油を無事故でやり遂げた隊員たちの労苦をねぎらいたい。 鳩山政権は、給油活動に代わって、民生分野を中心に5年間で総額50億ドル(約45 00億円)に及ぶアフガン支援策を表明した。タリバンの元兵士の職業訓練支援や約8万人の警察官給与の半額負担継続などで、間接的にテロとの戦いに貢献していく狙いだが、額は多くても日本の顔が見えない「小切手外交」に逆戻りしてしまうのは残念だ。汚職がまん延しているカルザイ政権への金銭的支援が、砂漠に水をまくようなむなしい状況に陥りはしないか。 給油活動は「無料の洋上スタンド」などとやゆされることはあっても、欧米やパキスタ ンなど11カ国から感謝され、海自の技量向上にも大いに役立った。燃料費を含めた活動費は昨年10月末現在、約715億円で、年間100億円以下に収まった。代替支援より格段に安いうえに、海自が得意とする分野で力を発揮できたという点で、名も実もある国際貢献のモデルケースになったのではないか。 給油活動に代わる効果的な人的貢献策は、見つかりそうにない。アフガン本土は民間人 はもとより、自衛隊員が活動するには危険過ぎる。政府は国際治安支援部隊(ISAF)作戦本部に自衛官の派遣を検討しているようだが、しょせん「顔見せ」程度にしかならないだろう。テロとの戦いで、日本ができることは限られている。鳩山政権は給油活動が果たした役割をきちんと評価し、今後の国際貢献に役立ててほしい。
|