世界経済は各国政府が協力して大規模な景気対策を実施したこともあって急落した後、持ち直している。日本も実質国内総生産(GDP)が2四半期連続でプラス成長となった。だが、回復の勢いは弱い。
鳩山政権初の予算編成である2010年度予算案は、一般会計規模が過去最大に膨らみ、国債の新規発行額も約44兆円と税収を大幅に上回る。家計への支援を重視し、自民党政権とは違う特色を出したが、企業が元気にならないと成長に結び付かないのではないか。
今年の経済はどうなるのか。鳩山政権の政策運営に大きく左右されるが、低空飛行が続きそうだ。物価が持続的に下落するデフレが長期化するとみられ、経済活動が縮小しかねない。
雇用情勢も気掛かりだ。昨年11月の完全失業率は5・2%で、3カ月連続で改善した後、悪化に転じた。企業の人員過剰感は依然強い。需要を高め、生産を拡大して雇用確保につなげる政策が求められる。デフレ脱却、雇用対策に本腰を入れて国民の期待に応えてほしい。
政府の経済見通しでは、10年度の実質成長率は前年度比1・4%で、3年ぶりのプラス成長とみている。
同時に完全失業率は5・3%と高止まりし、デフレが続くと予想している。GDPのプラス成長は良いのだが、中身が重要で、国民生活は全体として悪化しそうな状況である。
昨年12月に内閣府が発表した景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を3カ月前と比較した判断指数は急激に悪化した。
景気動向に敏感なタクシー運転手やコンビニ店長らの見方で、国内景気の減速が今後鮮明になりそうだ。消費者心理も悪化しており、冬のボーナスの大幅な落ち込みや雇用不安から元気がなくなっているのは間違いない。
10年度予算案では、子ども手当、高校授業料の実質無償化で家計負担を軽減する。マニフェスト(政権公約)に基づく政策で子育てに出費のかさむ世帯には恩恵になる。
だが、これが景気にどれほどの効果があるかとなると、はっきりしない。家計を通した成長戦略と主張する政府関係者もいるが、いつ効果が表れるのかは不明だ。
鳩山政権には成長戦略がないと批判されたこともあって、政府は年末押し迫ってから新成長戦略の基本方針を策定した。2020年度の名目GDPの目標値を650兆円程度とし、生活実感に近い名目で平均3%、実質で2%を上回る成長を目指している。重点分野として、環境、健康、アジア、観光・地域活性化などを挙げている。
問題はどう具体化するかだが、6月をめどに最終的にまとめるという。これまでの成長戦略は失敗したとみており、政治のリーダーシップ不足が原因と分析している。だが、鳩山政権のリーダーシップにも疑問符が付く。言葉だけに終わらないか、国民の視線は厳しいことを認識すべきだ。
成長するには内需の拡充が重要だが、輸出も不可欠といえる。これらを両輪にバランスよく進めることが必要になる。焦点はアジアで、中国をはじめ発展途上の各国の需要を見極め、政府と企業が協力して輸出戦略を推進することが大事だ。生産の拡大が雇用、消費を生み出すからである。
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