2000年代の最初の10年間は、9・11米中枢同時テロで始まり、世界的な金融・経済危機で終わった。冷戦体制の崩壊後、一極支配に自信満々の米国は単独行動主義に走るが、国際テロに脅かされ、イラクとアフガニスタンの二つの戦争に翻弄(ほんろう)された末に、自国発の金融危機で国際政治・経済の指導力を失墜させた。米国の衰退とともに多極化時代が幕開けした。
その輪郭が徐々に姿を現したのが09年だった。まず主役の交代だ。金融サミットや気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)などで、米欧日の主要国(G8)に代わって、中国、インド、ブラジルなど新興国・途上国の20カ国・地域(G20)が発言力を増し、国際舞台の前面に躍り出た。
G20は金融サミットの定例化で世界経済を協議する新たな枠組みとなった。先進富裕国だけではもう経済・エネルギーなど地球規模の問題は解決できない。経済のグローバル化がもたらした先進・新興・途上国グループ間の格差拡大に由来する利害の対立と協調が、世界の政治・経済動向の基調を決めてゆくだろう。
両軸となる米中G2が多様な多国間協調を通じて影響力を競い合う時代の始まりを予感させる。
オバマ大統領の登場で、米国はブッシュ前大統領の単独行動主義と決別し、国連、COP15、包括的核実験禁止条約など多様な国際機構・枠組みや関係国との対話を通じて解決策を探る、多国間協調外交へ転換した。
毎年8%台の経済成長を続ける中国は、G20のリーダーを目指す。ロシア、中央アジア4カ国との上海協力機構(SCO)やインド、ブラジルなど新興4カ国(BRICs)首脳会議、東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易圏創設、アフリカ諸国支援など多様な多国間協調を進め、米国の対抗軸を形成し始めた。
米中は他方で、両国関係の発展や地球規模の問題での協力強化で合意、協調路線も強めている。
政策課題では、10年は「核のない世界」へ前進できるかどうかが問われる年だ。越年した米ロの第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継核軍縮条約が早期に調印できるのか。4月の核安全保障サミット、5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議と、核軍縮・不拡散をめぐる国際会議が続く。米ロなど核保有5カ国の軍縮努力が厳しく問われるだろう。
核不拡散の最優先課題は北朝鮮とイランの核開発阻止だ。昨年後半、米朝対話が始まったが、北朝鮮の6カ国協議復帰の見通しは立たず、イランと欧米6カ国との核交渉も行き詰まったままだ。知恵を絞り、対話による解決策を探るべきだ。
テロとの戦いでは、米国が3万人の増派と11年7月の米軍撤退開始を発表したアフガン情勢が厳しさを増し、隣国パキスタンの治安も悪化している。「オバマの戦争」からの出口戦略を明示できるか試練の時だ。
10年は日米安全保障条約改定50年を迎える。鳩山由紀夫首相は、沖縄の普天間飛行場の移設問題を早急に決着させ、日米首脳間の不信感を除去する必要がある。また「日韓併合100年」に当たる。植民地支配の歴史を直視し、未来志向で日韓関係の新しいページを開く出発点としたい。「東アジア共同体」など日本独自の多国間協調の道も大胆に探るべきだろう。
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