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社説:「政治主導」法制化 出遅れを早く取り戻せ

 本来、真っ先に着手すべきだった課題である。政府・民主党は政治主導の強化を図るため副大臣・政務官の15人増員や国家戦略室の法制化などを柱とする関連法案の次期通常国会への提出で合意した。

 「脱官僚」や政府・与党の一体化など政治主導の実現を掲げる鳩山内閣だが、それを可能とする肝心の体制づくりをさきの臨時国会で先送りしたこと自体、怠慢だ。政府は関連法案の早期成立を図ると同時に、官僚機構や公務員制度の将来像をめぐる議論も進めるべきである。

 提出される法案は、副大臣、政務官のほか現在5人が上限の首相補佐官も10人に倍増され、政府に入ることになる国会議員はこれまでの74人から89人に増える。

 現政権は各省で閣僚、副大臣、政務官の「政務三役」による政策決定の定着を目指す。だが、一部省庁では要員不足が政務官らの過重負担を招き、官僚主導を助長していると指摘されてきた。もともと民主党はマニフェストに「政府に国会議員100人以上を配置」と明記しており、今回「党務や国会運営に支障を来しかねない」として増員幅を抑えたことは思い切りを欠く。首相補佐官の増員は民間の識者をあてるというが、中堅議員らの登用もためらってはなるまい。

 また、これまで十分に機能していなかった国家戦略室は「局」に格上げされる。副大臣級の官房副長官による国家戦略局長、政務官級の国家戦略官を新設するというが、より国会議員のスタッフが必要ではないか。財務相交代に伴い仙谷由人氏が国家戦略担当相となる一方で、成長戦略は前任の菅直人財務相が引き続きあたるなど、戦略室は指揮系統や権限がはっきりとしていない。法制化にあたり、こうした点も整理していく必要がある。

 一方で、関連法案のもうひとつのポイントと目されるのが、「内閣人事局」の設置による国家公務員幹部人事の一元管理の実現だ。縦割り行政の打破を目指し麻生前内閣時代に人事局設置法案が国会に提出された際は人事局長ポストへの官僚起用や、人事院からの機能移管の是非をめぐり議論が混乱し、衆院解散で廃案となったいきさつがある。政治主導を骨抜きにしないためにも、人事局長ポストに国会議員をあてるという原則は堅持すべきである。

 首相官邸、各省に十分な政治家のスタッフが配置され、政治主導は機能を発揮する。増員は理解できるが、各省の政務三役が過剰な事務を抱え忙殺されるのが、あるべき姿ではあるまい。「政と官」の役割分担、機動的な官僚機構について、さらに検討を加えなければならない。

毎日新聞 2010年1月14日 東京朝刊

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