社説

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

社説:日航再建 国民の理解が前提だ

 日本航空の再建をめぐって、法的整理とするか、私的整理とするかで協議が難航している。日本の空の足を守るためには日航の再生が不可欠だ。しかし、それには前提がある。

 困れば公的支援に頼るという日航の体質を抜本的に改める。さらに、国民の負担につながりかねない公的資金を投じる以上、再建策は公正で透明性の高いものでなければならないという点だ。

 官民ファンドの企業再生支援機構は、会社更生法の適用を求めている。しかし、会社更生法適用となると、債権放棄の額が膨らむため、銀行団としては避けたいところだ。日航としても、倒産という烙印(らくいん)を押される形となるため、イメージダウンになると反対している。

 このため、銀行団や日航、そして国土交通省は、私的整理による再建を求めている。

 支援機構が示している法的整理には、民事再生法を活用するという道もないではない。しかし、銀行も含め担保権者全員の同意が事実上必要となり、経営陣の刷新も不要という枠組みでは、実現は難しい。

 では、私的整理はどうだろうか。民事再生法でも無理だと判断されている状態なのに、複雑な利害を関係者だけで整理し、再建策をまとめることが可能なのだろうか。

 仮に私的整理で再建策がまとまったとしても、妥協の産物であり、公的資金の額が大きく膨らんでしまい、日航の体質改善も不十分で、高額の企業年金に手がつけられないといったことになれば、国民の理解は得られないだろう。

 いずれにしても日航の再建には公的資金の投入が避けられない。そうした状況下で、支援機構が会社更生法の適用を選択しようとしているのは、当然の流れと考える。

 会社更生法の適用となれば、裁判所が選定した管財人のもとで、公正で透明性の高い措置が期待できるからだ。

 日航の再建をめぐる動きは、二転三転を続けている。時間の経過とともに、日航の信用は低下し、損失の拡大が続いている。

 一方、日米航空交渉がまとまり、全日空は、ユナイテッド航空、コンチネンタル航空との3社で米国政府に独占禁止法の適用除外を申請した。路線や運航時間、料金といった面で3社が協力すれば、競争力が強化されるはずだ。

 しかし、日航はパートナーとなる米国の航空会社も決められない状態で、このままでは全日空に大きく後れをとることになりかねない。

 時間を浪費することはもはや許されない。国民が納得できる再建策を早急に示すことが政治の責任だ。

毎日新聞 2010年1月8日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

sn

PR情報

 

おすすめ情報

注目ブランド