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社説2 低位安定を探った日米外相(1/14)

 岡田克也外相とクリントン国務長官との日米外相会談は、低位安定の日米関係を探った。普天間基地の移設問題で平行線の見解を述べ合い、同盟深化への協議開始で一致した。日米関係がこれ以上傷つくのを恐れた外交的知恵なのだろう。

 普天間問題をめぐる日本側の作業は、5月に結論を出す基本方針は決まっているが、与党内の動きは複雑であり、見通しが立たない。米側は従来の日米合意が最善とする見解を変えていない。外相会談で前進が期待されないと予想されていたから、あえて決着を目指さなかった。

 2009年9月のニューヨークでの鳩山由紀夫首相とオバマ大統領との最初の日米首脳会談を思い出させる。あの会談も、インド洋の給油や普天間問題など対立が予想される話題を避け、軍縮、環境など一般的な意味での合意可能な問題を議論して外交的成功を演出した。

 実質的には懸案先送りであり、日米関係はそれから一歩も前進していない。12日の外相会談に至る経緯を見れば、現実は逆だろう。藪中三十二外務次官が事前に訪米し、大洋州を訪問するクリントン長官をハワイで岡田外相がつかまえる形で会談した事実それ自体が異例である。

 米側は会談に応じ、日米同盟には普天間問題のような個別案件を超えた意味があるとする態度も示したようだ。これをとらえて、日本側が外交成果と受け止めるとすれば、単純にすぎるだろう。

 立場を入れ替えて考えればわかる。先方の首脳が「私を信頼して」と言ったのに、それに見合う行動がなければ失望するのが普通である。が、角突き合わせる姿をこれ以上さらせば、両国ともに国際的に傷つくとする自制が働く。その結果が今回の外相会談だった。

 日米関係は、打撃をいかに小さくするかに腐心するダメージコントロールが求められる状況にある。それは同盟関係にある国同士では普通はない。普天間問題という「のどに刺さったトゲ」(長島昭久防衛政務官)を抜けば、事態は一変する。

 トゲを抜くのは鳩山首相の責任である。最初は浅かったトゲをどんどん深くして抜きにくくしてしまった責任が首相にはあるからだ。

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