小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入にまつわる政治資金規正法違反容疑で、東京地検特捜部が陸山会や小沢氏の個人事務所さらにゼネコンの鹿島本社などを家宅捜索した。
捜索を知った小沢氏は「私どもはこのような問題で法に触れるようなことをしたつもりはない」と語ったが、政治資金の動きや自身のかかわりなど具体的な説明は拒んだ。
国民から強い支持を得て政権をとった民主党の最大の実力者である小沢氏に求められるのは、捜査対象になった石川知裕・元秘書(現衆院議員)らの規正法違反容疑についての見解・弁明ではない。これまで繰り返してきた「政治活動費はすべて公表している」との言葉を多くの国民が信じられなくなった現状に「国民に誤解を与え、申し訳ない」(12日の記者会見)だけで済ませたのでは、政治家としての責任から逃げたことになる。
今回の捜索は、陸山会が東京都世田谷区の土地を秘書寮用地として購入した資金の出所を突き止めるのが目的と考えられる。
陸山会の会計事務担当だった石川氏は特捜部の事情聴取に対し、政治資金収支報告書の記載と異なり、実際には小沢氏から個人資金4億円を受け取り購入資金に充てた、と述べたという。
特捜部は石川氏の供述の裏付けをとるために、小沢氏に参考人聴取に応じるよう要請したとされる。事実の解明には当然にして不可欠の手順であり、小沢氏が捜査に協力しないのは極めて遺憾である。
小沢氏の政治資金を巡っては、西松建設の巨額献金事件でも公設第1秘書が規正法違反に問われ、裁判が進行中だ。この裁判で検察は、地元岩手県などの公共工事受注を望むゼネコンから小沢氏側が政治的影響力を背景に政治資金を集めてきたと主張している。
鹿島の本社、東北支店を小沢氏側団体と同時に捜索したのは、土地購入資金の4億円も、小沢氏の個人資金といいながら、実は西松事件と同様の手法でゼネコンから獲得したカネではないか、との疑いを検察が持つからだろう。
公共工事の受注を狙ってゼネコンが不明朗な資金を政治家に提供する昔ながらの利権構造に、小沢氏はつかっている。そう、2つの事件の捜査を通じて検察は指摘したわけだ。自民党長期政権を批判して政権交代を訴え実現した小沢氏には、カネと政治の問題で説明を尽くす、他の政治家に増した責務がある。