日米外相会談がハワイで行われ、日米の同盟関係を深めるための協議を始めることで一致した。単なる軍事同盟を超えて、核軍縮や環境など、地球的規模の課題での協力を深める契機にすべきだ。
懸案の普天間飛行場の移設問題では、岡田克也外相が五月までに日本政府の結論を出す方針を伝えたのに対し、クリントン国務長官はキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市辺野古)に移設する日米合意の早期履行を求めた。
普天間問題は平行線に終わったが、日米安全保障条約改定五十年を機に「同盟深化」に向けた協議を開始することでは一致した。
普天間問題とは切り離す形で同盟深化の協議を始め、移設先の決定先送りで広がったとされる日米間の亀裂を、最小限にとどめようということのようだ。
しかし、普天間問題は同盟協議の中で検討することが望ましい。なぜならこの問題は日米安保の現実を如実に表しているからだ。
沖縄には在日米軍基地の約75%が集中し、県土の一割以上を米軍施設が占めている。
同盟深化に向けた協議はまず、日米安保体制が沖縄の過重な負担の上に成り立っているという現実を、日米両政府がともに認識することから始めるべきだ。
県内に移設させる日米合意の履行は沖縄の負担軽減にはならず、沖縄県民の不満は解消されない。国民の理解が得られない同盟関係は脆弱(ぜいじゃく)だと心得るべきだろう。
日米関係強化の観点からも、県外・国外移設の検討は当然だ。
クリントン政権で国防次官補だったナイ・ハーバード大教授は米紙に「ワシントンの一部は、日本の新政権に強硬姿勢をとりたがっているが、思慮が足りない」と寄稿し、米政府の姿勢を戒めた。
合意履行を迫るだけでは関係を傷つけかねないとの認識が、米側で出てきたことは歓迎したい。
同盟関係は軍事面に偏りがちだが、同盟の意義はそれだけではない。安保条約は二国間の安全保障に加え、経済的安定や福祉充実に向けた相互協力もうたう。
オバマ米大統領が設定した核軍縮・不拡散、温暖化防止など地球的規模の課題は、日米同盟の進むべき方向も指し示している。
北朝鮮の核問題や中国の軍事的台頭を抱える東アジア地域では米軍の存在が当面必要だとしても、日米両国が核軍縮や環境などで協力する新しい同盟像を見せることは、世界の安定と繁栄に資する。
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