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【社説】

費用弁償 あなたの議会も点検を

2010年1月13日

 議会に出るたび、交通費として議員が一万円受け取っていた「費用弁償」を名古屋市議会が四月から廃止する。実費以上に支払う議会はまだ多い。報酬も高すぎないか。私たちの常識で点検せねば。

 地方自治法で、都道府県や市町村議会の議員が受け取るお金は、給与にあたる「議員報酬」(期末手当含む)、調査研究のための「政務調査費」、職務を行うのに必要な「費用弁償」の三種類がある。

 費用弁償の金額は各自治体が条例で決める。具体的には交通費が主のはずだが、名古屋市役所の隣の議会まで、地下鉄やバスなどなら往復でも千円そこそこだ。なのに一日一律に一万円払っていた。額は少ないように見えて、一人平均で年八十一万円余、全議員だと年六千万円以上にも達した。

 主要政党の相乗り市長と議会のなれ合いの中で、金額を決めていた揚げ句だろうし、当然ながら各地で返還を求める住民訴訟が相次いだ。

 二年半前の廃止まで名古屋と同じ一日一万円だった札幌市議会に対する住民訴訟では一審は「議会が決めること」と退けたが、二審の札幌高裁は昨年二月、「実際の必要額の三倍もあって違法」と全国初の全額返還を命じた。住民感覚に沿った判断であり、今度は最高裁が注目される。

 名古屋を含めた全国の十八政令指定市のうち、横浜や千葉、さいたま、浜松など八市は既に廃止し、静岡と川崎の二市も公共交通機関の運賃分だけになっている。

 都道府県議会でも、神奈川県議会が二〇〇七年度から実費払いにした。一方、愛知県議会は実費以外の定額分が、なお九千五百円。東京都議会は二十三区内で一万円、多摩地区は一万二千円で、一九八二年から見直されていない。

 むろん遠方の議員は時間もかかるし、相応の配慮は必要だ。しかし、世間の常識にそむけば「議員特権」「議会のお手盛り」と疑われても仕方ない。

 納得できぬのは、費用弁償だけではない。名古屋のように年千五百万円を超す高額報酬は本当に妥当か。政務調査費にも「使途不透明」と疑問が出ている。

 地方議員が地域の有力者で、議員特権が当たり前のような時代もあった。しかし、それでは私たちの声が聞こえるはずもない。特権的立場は、議会活動そのものをゆがめかねない。

 あなたのマチの議会は大丈夫ですか。

 

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