社説
「農」の再生 補助金行政を打ち破ろう(1月10日)
民主党が農業政策の目玉に掲げる農家の「戸別所得補償制度」が、新年度からコメを対象に始まる。
販売価格と生産費の差額分を国が補償する仕組みだ。コスト削減に努力した分だけ農家への補償額が増えれば、営農意欲も高まるだろう。
米価の低落傾向が続き減反による価格維持政策には限界が見える。
新制度の導入を、従来の補助金農政を打破する契機としたい。国内最大の食料基地である北海道農業の発展につなげることが重要である。
日本の食料自給率は約40%にすぎない。米国のように食料を輸出している国もある。自給率を高める施策も欠かせない。
*新たな理念の確立を
「1係1補助金」。農林水産省の仕事ぶりは、こう言われてきた。
補助金の種類は数百。係ごとに複雑な仕組みをつくり、官僚は申請の受け付けや審査で権限を振るう。
その補助金の多くが、官僚の天下り団体や、政治家の票田となる農業団体を潤していたことは否めない。
不要不急な農道整備などに巨費が投じられ、予算の無駄遣いも続いていた。従来の補助金農政は、政官業癒着の典型と批判されても仕方がない側面がある。
補助金をできるだけ廃止し、所得補償に一本化して予算の使い道を明確にする。これが制度の目的である。確実に実現したい。
産業界には、農業だけに所得補償するのは不公平だとの意見もある。
だが、日本の農業予算額は、農家1戸当たりで見ると、ドイツやフランスの4分の1以下、米国に比べて半分にも満たない。
先進国の中で、わが国の予算配分は農業に手薄なのが実情である。
水や空気の浄化、土壌の維持など農業は多面的な機能を持っていることも見逃せない。
日本学術会議は、農業が果たす社会的機能を年間8兆円の経済的価値に相当すると試算している。
所得補償制度は、農業の多面的な機能に対して、その対価の一部を農家に還元するという考え方に基づいて設計されている。
この理念は、欧州諸国では普及しているが、日本では身近な問題としてとらえられてはいない。
政府は、新制度の有効な活用が農業の自立につながることを具体的に示し、広く理解を得ていく必要がある。農業を育てていく新たな価値観を国民と共有することが大切だ。
4月から始まるコメのモデル事業に続いて、政府は将来、漁業や畜産での実施を視野に入れている。
問題点を洗い出し、制度を改善していく努力を国に求めたい。
*生産者の懸念消して
所得補償制度は、北海道農業に複雑な影響を与えそうだ。
留萌市幌糠地区。77戸の農家が水田や畑作を行っている。平均年齢は約65歳。高齢化と担い手不足が深刻化している典型的な地域だ。
幌糠地区では、各農家が話し合って稲作専業農家に水田を集約する一方で転作を奨励し、稲作と畑作のすみ分けを積極的に進めてきた。
水田規模を拡大しつつ、農地の状況に応じて小麦や大豆作りにも力を入れる。地域全体で、稲作と畑作を共存させる試みである。
だが、新制度の導入に伴って、この地区での小麦や大豆など転作補助金は年間4千万円強の減額となる。
これに対しコメ専業農家は、10アール当たり1万5千円の定額補償を受け取ることができる。
農家間の収入格差が広がり、地域のまとまりが崩れてしまう−。JA南るもい幌糠支所の鈴木博幸支所長は、そんな懸念を口にする。
農村の二極化が進めば、産地づくりなど地域独自の活動が立ち行かなくなることは明らかだ。
全国一律の所得補償とは別に、地域の実情に応じたきめ細かな施策が必要になる。
コメ専業農家は、所得補償を営農の追い風として生かしたい。
道内有数の米どころ、旭川市東鷹栖地区。ブランド米の生産に取り組む稲作農家の平均耕作面積は約20ヘクタール。大規模経営が道内で最も進んでいる地域の一つだ。
「ゆめぴりか」など販売価格が高い米を作れば、それだけ補償額は増える。JAたいせつ米穀販売課の金塚仁司課長は「水田面積を拡大する動きが強まる」と予測する。
生産コストを減らし良質の米を生産する。これが北海道農業の強みである。その力を高めるためには、制度の運用面での工夫が大切になる。
転作作物への助成額を増やし、自給率の低い麦や大豆などの生産意欲を引き出したい。農業団体と食品業界の連携で販路拡大も図るべきだ。
ソバなど特産品づくりに取り組んできた地域には、農村社会を守る見地からの国の支援が欠かせない。
新制度ではコメ粉など新規需要米への助成は手厚いが、その需要掘り起こしが今後の課題となる。
コメの大幅な消費拡大が期待できない以上、転作作物や新規需要米の生産と販路を拡充することが、食料自給率の向上に役立つはずだ。
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