社説
地域主権 自治を高める好機が来た(1月6日)
・政府は官僚の抵抗排除に全力を
・みんなの力で「わがまち」つくろう
国が地方を「はしの上げ下ろしまで」指導する時代に、はっきりと終わりを告げよう。
北海道は、他の都府県に比べて面積が飛び抜けて広い。また、自治体の姿も巨大都市の札幌から人口千人程度の小さな村までさまざまだ。その行政が、一律であっていいはずがない。
昨年の政権交代で「地域主権」を掲げる鳩山由紀夫内閣が誕生した。
これを踏まえ、政府は国が法令で地方を縛る義務付けの見直しや、国と地方の協議の場の法制化などを柱とする地域主権推進の関連法案を通常国会に提出する方針だ。
今夏には、国の出先機関改革や地方への権限移譲、「ひも付き補助金」に代わる一括交付金についての基本的な考え方を盛り込んだ「地域主権戦略大綱」(仮称)をまとめる。
2010年は、地方自治を高めるまたとない好機になる。地域のことは住民が決め、結果への責任も負う自治本来の姿を実現したい。
各省の分権への抵抗は根強い。政府はこれを徹底的に排除しなければならない。
鳩山首相は昨年暮れ、地域主権を織り込んだ憲法改正にも意欲を示した。だが、分権は目的ではなく、国民主権を実現する手段だ。安易に改憲に踏み込む必要性はない。
地方からは、「法令を盾に地方をがんじがらめにするのはやめてほしい」という切実な声が聞こえる。その声に応えるのに必要なのは、改憲よりもまず、地方自治法改正など分権へ向けた法整備だ。
同時に地方も、各省の関与や圧力をはね返す力を養うことが必要だ。
横並びの発想は捨てよう。
北海道には、豊かな自然や新鮮な食材など北の大地ならではの特長がある。東京と同じような暮らしができることが、住民の満足度を高めるとは限らない。
大都市も中小都市も郡部も、それぞれ地域にあった「自分たちの自治」の構築に努めてほしい。
多様な自治実現への仕掛けに、まちづくり基本条例がある。
釧路管内釧路町は昨年4月、「町民参加と協働のまちづくり基本条例」を施行した。
「町民」「地域」「役場」を対等なパートナーと位置づけた上での「町民参加と協働のまちづくり」(第3条)。これが基本原則だ。
条例に基づき町は昨年、NPO法人など13団体を「協働のまちづくり活動団体」として登録した。
その一つ、NPO法人「ゆめのき」は、同町北部の遠矢地域に町が設置した「遠矢コレクティブセンター」を核に、在宅介護支援や「ぽかぽか食堂」「ゆめのき塾」などの地域交流活動を行っている。
代表の佐々木大剛(ともよし)さん(37)は、「行政の役割は場所と知識、情報の提供だ。お金の面で頼るのは避けたい」と話す。
役所に何かをやってもらうのではない。まず自ら動き、役所が手を貸す。こんな新たなコミュニティー組織が育てば、分権時代の自治体の強力な支えとなる。
北海道新聞と北大は、昨年実施した郵送による共同世論調査(政治・社会意識調査)で、子育て支援や医療など9項目について「国と自治体のどちらに権限を持たせた方がいいか」を尋ねた。
自治体が国を上回ったのは産業振興だけだった。自治体はまだ、道民から全幅の信頼を寄せられるには至っていないということだろう。
しかし、分権が進めば、自治体の裁量で決められる分野は広がる。名古屋市や愛知県半田市は、独自の住民税減税を決めた。その結果は間違いなく住民生活に跳ね返る。
首長や議会は政策決定に当たり、住民との双方向のやりとりを強めなければならない。
まちづくり基本条例や議会基本条例は、行政と住民の距離を縮める有効な手段となる。
平成の大合併では、道内の市町村数は212から179に減った。
分権の受け皿づくりの側面はあったが、巨大化により事務を縦割りで処理せざるを得ず、結果的に非効率になりかねないとの指摘もある。
総務省は、複数の市町村が福祉事務所などの行政機関や税務課などの内部組織を共同で設置できるようにする地方自治法改正案を、通常国会に提出する方針だ。
一つの自治体で無理にすべてを完結させずに済む広域行政も、有力な選択肢といえる。
来春には統一地方選がある。首長選、議会議員選に向け動きを活発化させる候補者たちは分権をどう語るのか。しっかりと耳を傾けたい。それがわがまちを考える第一歩だ。
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